「星景写真(星と景色を同時に写した写真)を撮ってはみたものの、なんだか味気ない…。」と悩んでいる方はいないでしょうか。それはレンズの焦点距離が問題かもしれません。広い範囲を写すことのできる超広角レンズを使うことで、これまで写真の外にいた被写体を前景として写すことができるようになり、写真にストーリー性を持たせやすくなります。今回の記事では、筆者が超広角レンズを用いて撮影した星景写真と、各社のおすすめレンズを紹介します。
目次
普通の広角レンズの問題点
以下は35mm判換算24mmのレンズを用いて撮影した、残雪期の鹿島槍ヶ岳と星空です。一見悪くないようにも思えますが、この写真を1x.comやOneEyelandといった写真投稿サイトに投稿しても、評価はあまり上がらず、published(写真が審査員に受け入れられて一般公開されるようになること)はされませんでした。その理由は、この写真は一見すると美しいのですが、写真にストーリー性が無いからです。
超広角レンズを用いた星景写真の作例
以下に、超広角レンズを使い前景を入れることでストーリー性を持たせた筆者の写真を紹介します。
テント
以下は、知床連山のテント場にて、テントを前景、知床連山のシルエットを中景とした星景写真です。このとき、テントは筆者の一張のみで回りには誰もいませんでした。35mm判換算で16mmの超広角レンズを用いて撮影することで、ソロテントを前景として写しています。これによって、人気のない夜の山に張られている孤高のテントを表現することができました。この写真は1x.comでpublishedされています。今回のテントの位置関係の場合、通常の広角レンズではテントを前景とすることはできず、単純に山と星のみを写した味気の無い写真となってしまいます。
スノーモンスター
以下は、厳冬期の八甲田山にて、スノーモンスターを前景、山々を中景とした星景写真です。35mm判換算で16mmの超広角レンズを用いることで、手前から奥に広がるスノーモンスターを奥行感を持って撮影し、眠るスノーモンスターの大群を表現できています。通常の広角レンズでも撮影できないことはないのですが、スノーモンスターを一部しか写真内に入れることができず、イマイチな写真になってしまいます。この写真は1x.comでpublishedされています。
ドラム缶
以下は、南アルプスの農鳥小屋にて、青いドラム缶を前景、農鳥岳と富士山を中景とした星景写真です。これは知る人ぞ知ることなのですが、農鳥小屋には通称:農鳥おやじというクセのある(それでいてどこか暖かい)小屋番さんがおり、日中は青いドラム缶に座って登山者を待ち受けています。35mm判換算で16mmの超広角レンズを用いて撮影することで、この農鳥小屋のシンボルである青いドラム缶を前景として写せています。
各社の星景写真向け超広角レンズの紹介
目安として「35mm判換算で焦点距離が18mm以下であること」「解放F値が2.8以下であること」が星景写真向き超広角レンズに求められるスペックとなります。これらのスペックを兼ね備えた各社の星景写真向け超広角レンズを以下に紹介します。
SONY(Eマウント)
ソニーのFE 14mm F1.8 GMは、超広角14mm・開放F値1.8という高性能を約460gの小型・軽量設計で実現したレンズです。サジタルコマフレアを抑制した高い点像再現性を有しているため、星景写真に最適です。
Nikonミラーレス(Zマウント)
ニコンのNIKKOR Z 14-24mm f/2.8Sは、世界最短・最軽量 約650gのボディーと開放F値2.8の圧倒的な描写力を両立。超広角ながらズーム全域で点像再現性も良好で、星景写真に最適です。
Nikon一眼レフ(Fマウント)
NikonのAI AF Nikkor 14mm f/2.8D EDは、一眼レフ用のFマウントレンズです。14mmという広い焦点距離・比較的明るい解放F2.8を有しているため星景写真に最適です。
Canonミラーレス(RFマウント)
CanonのRF16mm F2.8 STMは、ミラーレス用のRFマウント初となる超広角の単焦点レンズです。質量約165gの携行性と広角を活かした遠近感を強調した迫力ある表現が可能です。F2.8と比較的明るいため、星景写真にも最適です。
Canon一眼レフ(EFマウント)
CanonのEF14mm F2.8 L II USMは、一眼レフ用のEFマウントレンズです。14mmという広い焦点距離・比較的明るい解放F2.8を有しているため星景写真に最適です。
富士フイルム(Xマウント)
SAMYANGのAF 12mm F2 Xは、富士フイルムXマウント用の超広角単焦点レンズです。35mm判換算16mmの超広角と明るい解放F値2.0を有しており、星景写真に向いています。解放からサジタルコマフレアが出ないことでも有名なレンズです。
マイクロフォーサーズ(OM SYSTEM, Panasonic)
OM SYSTEM(旧オリンパス)とPanasonicのG seriesはマイクロフォーサーズ規格を有しており、お互いのレンズを使うことができます。
OM SYSTEM(旧オリンパス)のM.ZUIKO DIGITAL ED 8mm F1.8 Fisheye PROは、35mm判換算16mmの超広角と、明るい解放F1.8を有しています。解放からサジタルコマフレアが出ないため、星景写真に最適です。珍しい魚眼レンズとなっており、パースの利いた印象的な写真を撮ることができます。もし魚眼を使いたくない場合、OM SYSTEMのカメラ本体に搭載された「フィッシュアイ補正」機能を使うことで通常の超広角レンズとして使うこともできます。本記事で紹介した写真はすべて本レンズで撮影したものです。
魚眼が好きではなく、尚且つPanasonic製のカメラ本体を使っている場合には、LEICA DG SUMMILUX 9mm/F1.7 ASPH. H-X09がおすすめです。
Lマウント(Panasonic, Sigma, Leica)
PanasonicのS series, Sigma, LeicaはLマウント規格を有しており、お互いのレンズを使うことができます。
PanasonicのLUMIX S 18mm F1.8は、Lマウント用レンズです。超広角18mmのダイナミックな遠近感を活かして、自由なアングルから背景を広く撮り込むことができます。また大口径F1.8ならではの低照度下での撮影に加えて、サジタルコマフレアを抑制することで画面全域で精細な描写を実現し、星空撮影などの様々な撮影シーンでワンランク上の表現を手軽に楽しめます。
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今回の記事は以上になります。