富士フイルム製のカメラは高感度ノイズの出にくさに定評があります。しかし、フルサイズセンサーを搭載したカメラに比べると1段程度劣るため、夜景撮影では不利になります。ノイズを消そうとしてlightroomでノイズ低減処理をしてしまうと、ノイズは消えますがディテール(写真の繊細さ)が損なわれてしまいます。そこで、DxO PureRAW 2というRAWデータの前処理ソフトを使うことで、ディテールを損なうことなく高感度ノイズを2段程度改善することができます。今回の記事では、富士フイルム製のミラーレスカメラ・X-T3の高ISO感度で撮影した星景写真のRAWデータに対して、DxO PureRAW 2を使った場合のノイズの低減効果を検証しました。
目次
DxO PureRAW 2が富士フイルムに対応するまでの経緯
通常のカメラに搭載されている一般的なベイヤーセンサーでは、青・赤・緑の素子が規則的な配列をしています。このためにDxO PureRAW等のサードパーティーの現像ソフトでも処理をしやすいことが特徴です。一方、富士フイルム製の大部分のカメラはX-Transという特殊な配列をしたセンサーを使っているため、DxO PureRAW 1は対応していませんでした。2022年3月にDxO PureRAW 2が発売され、富士フイルム製のカメラにも対応するようになりました。X-TRANSという特殊なセンサーに対してDxO PureRAW 2はノイズを低減できるのか、ディテールを損なわないのかが気になるところです。
使用機材
カメラ本体には富士フイルム製のX-T3を、レンズには解放F値が小さく暗所に強い同XF16mmF1.4R WRを使用しました。

使用方法
DxO PureRAW 2の使用方法については過去の記事やDxOの公式サイトをご覧ください。
処理条件
以下は、厳冬期の塩見岳を前景として星を撮影した作例です。月の出ていない時間帯だったため、前景である塩見岳は黒く潰れてしまっています。この塩見岳を明るくする(シャドウを持ち上げる)処理をすると盛大にノイズが出ることが予想されます。そこで、この星景写真に対して、以下の3つの処理を行い比較を行いました。
(a. 実施例)上記のカメラとレンズで撮影したrawデータをDxO PureRAW 2のDeep Primeモードで処理した後、lightroomでシャドウと黒レベルを+100にすることで暗部を明るくしました。
(b. 参考例1)lightroomを使い、rawデータのシャドウと黒レベルを+100にすることで暗部を明るくしました。
(c. 参考例2)参考例1の処理ののちに、lightroomにてノイズ低減の輝度を+50にすることでノイズを低減しました。

実施例紹介
以下に実施例と参考例の全体写真を示します。



全体写真ではわかりにくいため、以下に星や山を拡大した写真を示します。
星
写真中央付近の星を拡大した写真を以下に示します。(a)のDxO PureRAW 2では、(b)参考例1と比べてノイズが消えています。また(a)と(c)参考例2とを比べると、ノイズの出方は同程度であるものの、(c)では弱い星が消えてしまっています。



山
同様に、写真中央の塩見岳を拡大した写真を以下に示します。(a)のDxO PureRAW 2では、(b)参考例1と比べて岩山のノイズが消えていて、しかもディテールが同程度であることが分かります。また(a)と(c)参考例2とを比べると、ノイズの出方は同程度であるものの、(c)の方がノイズが残っているにもかかわらず、ディテールが損なわれていることがわかります。(c)のノイズにはカラーノイズもあるため、カラーノイズ低減処理を施せば改善される可能性はありますが、(a)のディテールには及ばないでしょう。



これらの結果から、DxO PureRAW 2はX-TRANSという特殊なセンサーを搭載したカメラに対しても、ディテールをつぶすことなく、ノイズを低減できる優秀なソフトであると言うことができます。
料金体系
DxO PureRAWの価格は¥13,900で、買い切りとなっています。adobeでは年間¥12,936掛かり毎年更新が必要なことを考えると、破格の安さであると言えるのではないでしょうか。
今回のDxO PureRAW 2の紹介記事は以上になります。尚、以下記事にて各社ノイズ低減ソフトの比較を実施していますので、合わせてご覧ください。
