(2020/8/15:大幅に加筆修正しました)
被写体によっては、カメラのオートモードではうまく撮影できないものが存在します。花や高山植物もそのうちの1つです。
今回の記事では、普段、筆者が実践している花や高山植物の撮影方法を紹介します。
・絞り、露出補正、シャッター速度を変更可能なカメラをお持ちの方(高級コンデジ、ミラーレス、一眼レフ等)
・花や高山植物を上手に撮影したい人
目次
絞る
F値を大きくする(絞る)ことで、被写体深度を深くして花びら全体にピントを合わせます。
・F値を大きくする→被写体深度が深くなる=奥行全体にピントが合う
・F値を小さくする→被写体深度が浅くなる=奥行の一部にピントが合い、背景がボケる
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被写体深度はセンサーサイズによっても変化し、サイズが大きくなるほど被写体深度も浅くなります。APS-Cセンサーの場合にはF13~16, マイクロフォーサーズセンサーの場合にはF11~13を使うことが多いです。(被写体の奥行や露光条件によってはこの範囲から外れたF値を選択することもあります)
APS-Cセンサーよりもサイズの大きなフルサイズセンサーの場合には、APS-Cセンサーよりもさらに1段F値を大きくすると良いでしょう。
以下にAPS-Cセンサーを搭載したカメラにおいて、F16まで絞ってコスモスとその上に留まる蝶々を撮影した例を紹介します。
花弁、花びら、蝶々の全体に渡ってピントが合っていることがわかるかと思います。
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X-T3(APS-C), F16, 1/500秒, ISO800, 換算203mm, 露出補正±0
以下は、F8までしか絞らなかったためにピンフォーカスとなってしまった悪例です。上記の写真と比べると、花の一部分にしかピントが合っていないため、イマイチに感じてしまいます。
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X-T1 (APS-C), F8, 1/900秒, ISO400, 換算203mm), 露出補正±0
尚、一般的には「F値を小さくすることで花の背景をボカすのが良い」とされることも多いです。「花の撮影時にF値を大きくする」というのは筆者の個人的な見解であることを申し添えておきます。
露出補正をマイナスにする
一部の色の濃い花を除いて、露出補正を-1~-0.7程度に下げます。
これは、露出補正0の場合だと花が明るく写ってしまい、輪郭が潰れてしまうためです。また、露出補正を下げることには「ISO感度を小さくできるので高感度ノイズを減らせる」「シャッタースピードを速くできるので手振れや被写体ブレを低減できる」といった副次的なメリットもあります。
以下に、露出補正0でイワオトギリを撮影した悪例を載せます。
黄色いイワオトギリの輪郭が潰れてしまい、イマイチな写真となってしまいました。

OM-D E-M5 MarkⅡ(マイクロフォーサーズ)
F13, 1/250秒, ISO2500, 換算300mm, 露出補正±0
補足としては、これくらいであればRAW現像で救うことも可能です。しかし、RAW現像で単純に露出補正をマイナスにするだけでは不自然な仕上がりになってしまうため、それなりのテクニックが必要です。よって、できる限りカメラ設定を現地で合わせておいた方が、良い写真を撮ることができます。
以下に、露出補正をマイナスにして撮影した作例を数例紹介します。
いずれの例においても、花の色が潰れずに、輪郭をはっきりと描写できていることがわかるかと思います。
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X-T3(APS-C), F16, 1/125秒, ISO1600, 換算36mm, 露出補正-1.0
-4.jpg)
OM-D E-M5 MarkⅡ(マイクロフォーサーズ)
F14, 1/250秒, ISO800, 換算300mm, 露出補正-0.7
-1.jpg)
OM-D E-M5 MarkⅡ(マイクロフォーサーズ)
F11, 1/250秒, ISO500, 換算300mm, 露出補正-0.7
-5.jpg)
OM-D E-M5 MarkⅡ(マイクロフォーサーズ)
F11, 1/500秒, ISO200, 換算300mm, 露出補正-0.7
-7.jpg)
X-T3(APS-C), F11, 1/140秒, ISO320, 換算36mm, 露出補正-0.7

X-T3(APS-C), F20, 1/34秒, ISO320, 換算36mm, 露出補正-0.3
いま見返すと、-0.7まで露出補正を下げた方がよかった。
風の強いところではシャッター速度を速くする
風で花が揺れている場合には、シャッター速度を1/250~1/500程度まで早くし、花の揺れを止めましょう。当然ですが、手振れ補正機能では花の揺れ(被写体ブレ)を止めることはできません。
以下に作例を数例紹介します。
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OM-D E-M5 MarkⅡ(マイクロフォーサーズ)
F11, 1/250秒, ISO4000, 換算300mm, 露出補正-0.7
-2.jpg)
X-T3(APS-C), F13, 1/250秒, ISO2000, 換算36mm, 露出補正-0.7
-3.jpg)
X-T3(APS-C), F8, 1/500秒, ISO4000, 換算36mm, 露出補正-1.3
-4.jpg)
X-T3(APS-C), F11, 1/500秒, ISO1600, 換算36mm, 露出補正-0.7
尚、薄暗いところでシャッター速度を速くすることには注意点もあります。
それは「ISO感度が上がることでノイジーな写真となってしまうこと(高感度ノイズ)」です。これについては、「高感度ノイズを許容する」「被写体深度の浅さには目をつむり、F値を小さくする」などの割り切りが必要になります。
また、風には強弱があるので、風が弱まった隙を狙い「シャッタースピード1/100程度で撮影する」といった手法も有効です。
今回の記事は以上になります。