山には人工的な登山道を通って登ることが一般的です。非一般道や一部の破線ルートは、藪や岩に覆われており登るのが困難なことが多いです。一方、雪が藪や岩を隠してくれる積雪期になると、非一般道を登ることができるようになります。これをいわゆるバリエーションルートと言います。バリエーションルートでは、登山者の少ない静かな山や、普通では見ることのできない景色を見ることができます。今回の記事では、積雪期になると登りやすくなるバリエーションルートを5つ紹介します。
目次
積雪期バリエーションルートの定義と特徴
今回は、以下の①~③いずれか1つ以上を満たすものを「バリエーションルート」と定義します。
②山と高原地図で登山道が破線になっている
③無雪期には藪に覆われる
ルート紹介
以下に積雪期のバリエーションルートを紹介します。
阿寺山
阿寺山は、越後三山の近くに位置する標高1508mの山です。登山道の大部分は破線ルートとなっており、夏には藪が多くあまり登る人は多くありません。藪が雪で覆われる積雪期には展望登山やバックカントリーに適した山となります。登山道や山頂からは越後の名峰を一望することができます。
泊数…日帰り
技術的難易度…易しい(下山時には念のためにピッケル必要)
最高地点の標高…1,508m
登山適期(目安)…1月上旬~4月下旬
上越国境稜線(朝日岳~巻機山縦走)
上越国境稜線とは、群馬県・谷川岳近くに位置する白毛門から、朝日岳を通り、新潟県・巻機山へと続く稜線です。ルート上から東側には上州武尊岳や至仏山、西側には谷川連峰、北側には越後三山の絶景を眺めることができます。ルート上の大部分では登山道が整備されておらず、藪が茂っているため夏には歩くことが困難です。一方、厳冬期には大量の雪と暴風によって進路を阻まれます。よって、藪が隠れ尚且つ天候が安定する3月下旬~5月下旬の限られた時期にのみ歩くことができます。
泊数…2泊3日
技術的難易度…中程度(安定してピッケルを使える)
最高地点の標高…1,967m
登山適期(目安)…3月下旬~5月下旬
仙ノ倉山 北尾根
仙ノ倉山は、 谷川連峰に属する標高2,026mの山です。夏の時期には、西側の平標山を経由して登るのが一般的です。今回紹介する仙ノ倉山・北尾根には登山道は付いておらず、夏には深い藪に覆われます。藪が雪で埋もれる積雪期のみ歩くことができる、上州の名ルートです。静かで広大な雪原を独り占めできる、とてもいいルートです。
泊数…1泊2日
技術的難易度…高(旧斜面のトラバースや痩せた尾根で滑落しない技術が必要。場合によってはロープも必要)
最高地点の標高…2,026m
登山適期(目安)…3月上旬~4月下旬
白馬岳・杓子尾根、双子尾根
双子尾根と杓子尾根は、白馬連峰の1座を形成する杓子岳にダイレクトに登ることができるバリエーションルート(非一般道)です。無雪期は藪漕ぎがひどく登ることができないため、主に残雪期に登られます。このルートでは、アイゼンとピッケルを安定的に使えないと滑落します。 またバリエーションルートのため標識も皆無で、自らルートファインディングをしなくてはいけません。以下の記事では、猿倉山荘から双子尾根、杓子尾根を経由し杓子岳に登る2泊3日テント泊のコースを紹介しています。
泊数…2泊3日
技術的難易度…高(旧斜面のトラバースや痩せた尾根で滑落しない技術が必要。場合によってはロープも必要)
最高地点の標高…2,903m
登山適期(目安)…3月中旬~5月下旬
白峰南嶺
白峰南嶺とは、白峰三山(北岳、間ノ岳、農鳥岳)の南側に位置する山々のことです。稜線上には山小屋や避難小屋が皆無で、水の補給もできず、しかも稜線に出るまでに標高差2,000mを登らなければならない厳しい登山道です。もちろん、登山者はとても少なくなります(稜線に出るまでには小屋や水場は有り)。冬になると雪を溶かして水を確保できるようになるため、この点においては登りやすくなると言えます。
一方で、稜線に出てさえしまえばその技術的難易度は厳冬期白峰三山縦走よりは易しく、ロープを使うような場面もありません。白峰南嶺の大部分は森林限界よりも上に位置しており、これらの厳しさを乗り越えた登山者のみが、人気の少なく静かな絶景の稜線歩きを楽しむことができます。以下の記事では2泊3日で白峰南嶺を登った記録を紹介していますが、標準的には3泊4日が必要です。
泊数…3泊4日
技術的難易度…中程度(ピッケルを安定して使える)
最高地点の標高…2,895m
登山適期(目安)…1月上旬~5月中旬
まとめ
バリエーションルートでは営業小屋は皆無で、登山者もあまり多くありません。よってソロ登山で怪我をした場合には助けを呼ぶことが困難です。なるべく技術的に成熟したパーティーで登ることをおすすめします。今回の記事は以上になります。