森林限界よりも上部の雪山に登る場合には、ピッケルが必要となることが多いです。しかし「ピッケルには形やメーカーが沢山あって、どれを買ったらいいかわからない」という方は多いと思います。今回の記事では、ピッケルの選び方と、筆者がオススメするピッケルを紹介します。
目次
ピッケル種類と特徴・役割
ピッケルには大きく分けて以下の3つの種類があります。
・急斜面用(ミックス用)…角度の急な斜面で使われる。滑落停止などの役割を果たす
・アイスクライミング用…雪壁を登るのに使われる
ピッケルの名称は、以下のようになっています。
それぞれのピッケルの詳細を以下に解説します。
縦走用
縦走用ピッケルは、シャフトの部分がまっすぐになっているのが特徴です。構造はシンプルで、グリップの部分に滑り止めのゴムが付いていないモデルが多いです。
縦走用ピッケルは、比較的なだらかな稜線上で使われます。「トレッキングポールだと不安だけれど、本格的なピッケルを使うまでもない」というような場合です。この場合、ピッケルは滑落停止というよりは、ポールの代わりの役割を果たします。
急斜面用
急斜面用ピッケルは、シャフトの部分が少しだけ曲がっているのが特徴です。(ちなみに、急斜面用ピッケルというのは筆者が作った造語で、正確にはミックス用ピッケルと呼ばれます)
急斜面用ピッケルは、比較的角度の急な斜面で使われます。万が一登山中に足を滑らせた場合に滑落停止するためにピッケルを使います。あるいは、ピッケルのブレード部を手で持ってピックを雪面に刺しながら登るのに使います。
なぜシャフトが曲がっているのが良いかというと、その分ピックの部分が雪面に刺さりやすくなるからです。以下にイメージを示します。
急斜面用ピッケルを、縦走用ピッケルとしても使うこともできます。尚、今回の記事では、この急斜面用(ミックス用)ピッケルをオススメします。本記事の後半で、各メーカーの急斜面用ピッケルを紹介します。
アイスクライミング用
アイスクライミング用ピッケルは「シャフトの部分が極端に曲がっている」「石尽きの部分にも歯が付いている」「ブレードが小さくなっているか、無い」のが特徴です。
アイスクライミング用ピッケルは、凍った滝、人工的な氷壁、バリエーションルートの崖などで使われます。尚、アイスクライミング用ピッケルは長さが短いため、縦走用ピッケルとしては使うことができません。
始めて買うなら「急斜面用ピッケル」が良い
ここまでで3種類のピッケルを紹介しましたが、これから始めてピッケルを購入する場合には、急斜面用(ミックス用)ピッケルを購入することをオススメします。理由は以下の3つです。
・縦走したくてピッケルを購入する人の大部分は、急斜面を登る雪山登山にも手を出すことが多いから
・アイスクライミング用ピッケルは形状が特殊なので、縦走用の用途には使いにくいから
ピッケルの選び方
以下に、急斜面用(ミックス用)ピッケルの選び方を紹介します。
長さ
ヘッドを持ったときに、スパイクの先が踝(くるぶし)に来るくらいの長さが良いです。これぐらいの長さが、縦走時にトレッキングポールの代替として使いやすいです。
ネット通販で購入したい場合には、メジャーがあるとちょうどいいピッケルの長さを計測することができます。
ゴム
グリップにゴムが付いているモデルが良いです。
急斜面の岩場では、グリップを持ってピックを岩に引っ掛けて登ることがあります。この際に、グリップにゴムが付いていると滑りにくいからです。反対に、ゴムが付いていないとピッケルと手が滑ってしまい、結構危ないです。
おすすめメーカー・ピッケルの紹介
以下に、急斜面(ミックス)用ピッケルのオススメを紹介します。
1つ目はペツルのサミットエボです。
2つ目はグリベルのエアーテックエボリューションです。
いずれのピッケルも、シャフトがやや曲がった急斜面用(ミックス用)のピッケルです。シャフトには滑り止めのゴムが付いています。ペツルとグリベルは、ピッケル(やアイゼン)の最高級メーカーです。これらのメーカーのピッケルを選んでおけばまず間違いはありません。
3つ目はクライミングテクノロジーのハウンドです。
クライミングテクノロジーはイタリアの会社で、2016年頃から日本での販売を開始した黒船的存在です。ペツルやグリベルと比べて価格が安くなっていますが、しっかりとした作りをしています。筆者もハウンドの前モデルを使用しています。
合わせて購入したい品々
ピッケルと合わせて購入しておきたい品々を、以下に紹介します。
カラビナとスリング
ピッケルを手から離しても落下させないように、カラビナとスリングを使ってピッケルを体に固定します。
カラビナやスリングにはサイズが何種類かあります。カラビナは長手方向の耐強度が20kN以上のもの、スリングは120cmのものがちょうどよいです。
リーシュコード
ピッケルによってはリーシュコードが付属していない場合があります。この場合、リーシュコードを別途購入する必要があります。リーシュコードによっては、そのまま体にピッケルを固定できるものもあります。この場合、前述のカラビナとスリングを購入する必要はありません。以下のリンクで紹介しているリーシュコードは、カラビナとスリングが不要な耐ぴうです。
保護パーツ
ピッケルの鋭利な部分(ヘッドと石突部)を保護するためカバーを被せます。
ピッケルを裸で持ち歩くと、周囲の人に怪我をさせてしまうことがありとても危険です。カバーは、ヘッドと石突部とで別々に用意する必要があります。ヘッドカバーについてはどのメーカーのものを使っても大差ありません。一方、石突部のカバーはペツル製のものをおすすめします。理由は、意図せずカバーが取れにくい構造をしているからです。ペツル製以外の石突カバーは外れやすく、気が付いたら無くなっているということも多いです。
ヘルメット
ピッケルが必要な場面では、ヘルメットも装備します。
ピッケルを使っていて転んだ場合、雪面に頭を打つことがあります。この場合に、頭を保護するためにヘルメットが必要になります。
今回の記事は以上になります。