モニタの色は、正確ではありません。特にモニター使用時間が長くなるほど、正確な色から外れてきます。RAW現像をしていい写真ができた!と思って、それをSNSにアップしても、実は正確な色から外れていて色飽和していたり、あるいは薄い色になっていた、ということは実際に有る話です。そこで、定期的(1か月に1度ほど)にキャリブレーションをしてディスプレイの色を正確なものに合わせる必要があります。
キャリブレーションには「ハードウェア・キャリブレーション」と「ソフトウェア・キャリブレーション」の2種類があります。前者の方が色の再現性など性能が高い代わりに、実施できるモニターが限られます。後者は色の再現性などはやや劣るものの、すべてのモニターで実施可能です。
今回の記事では、datacolor製の「SpyderX Pro」でソフトウェア・キャリブレーションする方法を紹介します。
ちなみに、今回キャリブレーションするのはLG電子の「27UL850-W」になります。
(尚、このモニタはハードウェア・キャリブレーションにも対応しています)
目次
SpyderX Proの紹介
SpyderXは、Spyder5(2015年発売)の後継機種として2019年3月に発売されたキャリブレーターです。
SpyderXは、キャリブレーションに要する時間が従来の5分から2分以下へと、大幅に短縮されています。
キャリブレーションは毎月行う必要があるため、この時間短縮はそれなりにメリットがあるのではないかと思います。
SpyderXには、Express, Pro, Eliteの3種類があり、後者ほど値段と機能が高くなります。
写真編集用途にはProをオススメします。
Expressだと機能が制限されており、Eliteだと動画やプロジェクタ向きになります。
SpyderXには、国内正規品と平行輸入品とがあります。
平行輸入品の方がやや値段が安いですが、国内正規品を購入するようにしましょう。理由は、国内正規品でないとキャリブレーションに必要なソフトの起動や、故障時のメーカーサポートを受けられないためです。
SpyderX Proでのキャリブレーション方法
以下に、具体的なキャリブレーション方法を記載します。
開封
まずパッケージを開封します


ソフトウェアダウンロードと起動
datacolorのサイトからアプリケーションをダウンロードします。
WindowsとMacとでアプリケーションが違います。
ダウンロードし終わったら、アプリを起動します。

次に、SpyderX ProのUSBケーブルをPC本体に接続します。
このとき、キーボードやモニタのUSBケーブルには接続せず、必ずPC本体のUSBハブに接続しましょう。

シリアルナンバー入力
画面にシリアル番号を入力し、「次へ」をクリックします。
シリアル番号は、パッケージ内部に記載されています。


キャリブレーション前のチェック事項1
「インターネットでアクティベーションする」を選択し、「次へ」をクリックします。
(インターネットに接続されていない場合には、「手動でアクティベーションする」を選択します)

氏名、メールアドレスなどの個人情報を入力し、「次へ」をクリックします。

ライセンスコードが表示されます。
ライセンスコードをメモし、「完了」をクリックします。
(ライセンスコードは、先ほどのシリアル番号とは異なります。必ずメモしておきましょう。ソフトウェアの再インストール時に必要となります)

「ソフトウェアのアップデートを自動的にチェックしますか?」と聞かれます。
「はい」をクリックしましょう。

「弊社の製品工場のために、お客様のキャリブレーションデータとエラーメッセージを弊社と共有していただけますか?」と聞かれます。
筆者は「はい」をクリックしました。

キャリブレーション前のチェック事項2
以下を確認します。
- 「ウォームアップ」ディスプレイを30分以上ウォームアップしましたか
- 「照明条件」強い光がディスプレイに直接当たっていないことを確認しましたか
- 「ディスプレイコントロール」モニタの設定をリセットしましたか
- 「Spyderの接続」SpyderをコンピュータのUSBポートに接続します

モニタを初期化します。

モニタの明るさを、普段使う明るさに設定します。

モニタの電源を付けてから30分以上経過した後、4項目にチェックを付けて、「次へ」をクリックします。

キャリブレーション前のチェック事項3
「デスクトップ」と「ノートブック」のうち、自身が使っているPCタイプにチェックを付けて「次へ」をクリックします。

モニタのメーカー名とモデル名を入力し、「次へ」をクリックします。
尚、今回の場合メーカー名は自動で入力されましたが、モデル名は自動では入力されなかったため、手動で「27UL850-W」と入力しました。

モニタの機能で、「明るさ」と「色温度(ケルビン)を設定できる場合は、
画面上の「明るさ」と「ケルビンプリセット」にチェックを付けて、「次へ」をクリックします。
27UL850-Wの場合は、両方にチェックを付けます。

バックライトの種類を「広角域LED」「標準LED」「一般」「GB LED」から選択し、「次へ」をクリックします。
今回のモニタ27UL850-Wは、10bit(10.7億画素)の広い色域のモニタのため、「広角域LED」を選択しました。
通常の8bitモニタの場合には、「標準LED」をクリックします。


「FullCAL」を選択し、「次へ」をクリックします。

モニタの設定を、「Warm(暖色)」に変更します。
Warmは6500Kに相当します。

ルームライト調整
SpyderX Pro本体を机の上に置きます。(カバーは付けたままでよいです)
この時点で、部屋の明るいを暗くし、カーテンを閉めておきます。

「次へ」をクリックし、ルームライトを測定します。

明るさが120cd/m^2以下になっていることを確認したら、「次へ」をクリックします。
(120cd/m^2以上の場合は、部屋が明るいということなので、部屋を暗くして作業をやり直します)

SpyderX Proのモニターへのセット
SpyderX Proのカバーを外し、モニターにセットします。

「次へ」を押してキャリブレーションを開始します

キャリブレーション本番
画面の色が変わり、キャリブレーションが開始されます。


モニタの明るさを調整するように指示が出ます。

モニタの明るさを調整し、更新を押し、水色のバーを緑の印に合わせます。


「続行」をクリックします。

キャリブレーションが完了したら、「完了」をクリックします。

プロファイルに名前を付けて保存します。

最後に、モニタの明るさを、普段つかっている明るさに戻します。
キャリブレーションの効果確認
SpyderX Proのソフトウェアには、キャリブレーションの効果を実感できる機能が付いています。
早速、比較してみましょう。
以下の写真で左がキャリブレーション前、右が後です。
空の色、建物の茶色など、結構違いますよね。
買ってから半月のモニタでこれだけ違うので、購入後数年経過したPCでは、さらに違うことでしょう。
キャリブレーションの効果を実感できた瞬間です。
関連記事の紹介
以下に関連記事を紹介します。
以下は、新進気鋭のRAW現像ソフト・Luminar4の記事です。
人工知能を使って、自動で写真の特定の部位のみを編集できるとてもいいソフトで、価格も安いです。

以下は27UL850-Wを接続しているPC本体の記事です。

今回の記事は以上になります。
コメント
コメント失礼いたします、本検証で行っているキャリブレーション方法はLGの純正ソフトTrue color proを使わないソフトウェアキャリブレーションだと思っております。(プロファイルを作成してPC側で出力を調整しているため)
とういうのも、当方同機種で純正ソフトにてハードウェアキャリブレーションを試みたところそソフトウェアが不安定すぎて断念した経緯があります。(純正ソフトでなければモニタ側で色の出力を調整するのは不可ではないかと思っています。)
polori様
コメント有難うございます。
ご指摘の通り、本記事で実施しているのはソフトウェアキャリブレーションでした。
お恥ずかしい限りです。
本記事を「ソフトウェア・キャリブレーション」の内容に改訂するとともに、「ハードウェア・キャリブレーション」の記事を作成しました。
ご参考になれば幸いです。
https://mountainviewjapan.com/spyderxpro-27ul850-w-hardwarecalibration/