X-T4がα7 IIIやSIGMA fpに勝る6つのポイント【カメラ比較】

筆者は、富士フイルムのXシリーズをメインカメラとして使っています。
XシリーズのセンサーサイズはAPS-Cです。一般論として「APS-Cセンサーではフルサイズセンサーよりもカメラ本体を小型化・低価格化できる一方で、画質では一歩譲る」とされています。

しかし、他社のミラーレスカメラを見ると、(Xシリーズのフラグシップ機である)X-T4と重量、実売価格がほぼ同じであるにも関わらず、フルサイズセンサーを搭載したカメラも存在します。例えばSONYのα7 IIIX-T4よりもわずかに43 g重いだけですし、SIGMAのSIGMA fpに至ってはX-T4より185gも軽くなっています。(詳細については表1を参照)


表1 X-T4及びライバルとなるフルサイズミラーレス一覧
機種名X-T4α7ⅢSIGMA fp
メーカー富士フイルムSONYSIGMA
センサーサイズAPS-Cフルサイズフルサイズ
有効画素数2,610万2,420万2,460万
重量607 g650 g422 g
耐寒性能-10℃記載無し0℃
実売価格191,000円203,456円183,995円

では「X-T4よりもα7 IIISIGMA fpの方が優れたカメラなのか?」というと、必ずしもそうとは限りません。なぜならば、Xシリーズにはスペック上には表れない特徴とメリットが存在するからです。

余談ですが、2011年に東芝からREGZA Phone IS04というスマートフォンが発売されたことがあります。このスマホは「完全防水」「ワンセグ視聴可能」など、スペック上は当時最も優れたスマホでした。
しかし、実際に使ってみると不具合だらけで「Google mapを開こうとすると毎回スマホが固まり、再起動に10分掛かる」「なぜかメールと電話のアドレス帳が別々になっており、二重運用が生じる」「気づかないうちに発熱しており、電池容量が5%になっている(自動ホッカイロ機能?)」「動作が恐ろしく重く、紙芝居のようになる」などの症状が現れました。

話がそれましたが、電子機器においてはスペックだけでは判断できない部分があるということです。筆者が使ってみて気が付いた「富士フイルムXシリーズの特徴とメリット」は以下の6点になります。

富士フイルムXシリーズの特徴とメリット

・各種調整ダイヤルが独立している→設定を素早く変更しやすい
・レンズが軽い→登山の荷物を軽くできる
・寒い場所でもバッテリーが落ちない→冬山登山でも問題なく撮影できる
・JPEG撮って出しの色が綺麗→RAW現像の手間を省ける
・APS-Cの2,600万画素であれば、実使用上問題無し
・APS-Cの中では高感度に強い→星空や夜景を(ノイズが少なく)綺麗に撮影できる

この6点の特徴とメリットについて、α7 IIISIGMA fpと比較をする形で以下に詳しく解説していきます。

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各種調整ダイヤルが独立している

Xシリーズの特徴とメリット1点目は、絞り、シャッタースピード、ISO感度、露出補正などの各種パラメーターを調整するためのダイヤルが独立していることです。カメラに慣れてくると、撮影時にこれらのパラメーターを複数同時にマニュアル設定する場面が出てきます。Xシリーズでは、各種ダイヤルがそれぞれ独立しているために調整が容易で、しかも撮影機会を逃しにくいです。

X-T3の軍幹部の様子。
ISO感度、絞り、シャッター速度、露出補正がそれぞれ独立したダイヤルになっている。


一方、他社のカメラにおいてこれらのパラメーターをマニュアルで調整する場合には手間が掛かります。まずダイヤルをマニュアルモードにし、液晶画面に表示された数値を見ながら各種パラメーターを調整していきます。操作がかなり煩雑になるため、時間を食ってしまい比較的撮影機会をロスしやすいと言えるでしょう。

一般的なカメラの説明①
各種パラメーターをマニュアルで設定するためには、まずダイヤルをM(マニュアル)に設定する

一般的なカメラの説明②
次に、カメラのダイヤルを回し、画面左下に表示されたシャッター速度とF値を調整する。

Xシリーズの独立ダイヤルがメリットとなるパターンを2つ紹介します。

1パターン目は、高山植物の撮影時です。
筆者の場合、高山植物の撮影時には3つのダイヤルをマニュアルで調整することがあります。「花全体にピントを合わせるために絞る」「風で揺れている花を止めるために、シャッタースピードを速くする」「森の暗い雰囲気を出すために、露出補正をマイナスにする」などです。

高山植物の時期には登山道は一面中お花畑と化します。このような場合でも、花の状況に合わせてすぐにカメラの設定を変えることができるので、同行者を待たせたり、山中で日が暮れてしまうというようなリスクを最小限にすることができます。

利尻山で撮影した高山植物。
なるべく花弁全体にピントを合わせたいためF8で、
風で揺れる花を止めたいためシャッタースピード1/500秒で、
暗い樹林帯の雰囲気を出すため露出補正-1.3にて撮影。
カメラ本体はX-T3.


2パターン目は、夕暮れの撮影時です。

「風景全体にピントを合わせるためにF11まで絞る」「できる限り高感度ノイズを減らすために、シャッター速度を限界以下に落とす」などです。

夕暮れ時の明るさは1分単位で変わるので、カメラの設定に戸惑っているとベストショットを逃してしまいます。Xシリーズであれば、カメラの設定を素早く変更できるため、この点においてメリットがあります。

烏帽子小屋から、夕焼けに染まる北アルプスを撮影。
風景全体にピントを合わせるためF11で、
ISO感度を落とすためにシャッタスピード1/8秒にて撮影。
結果的にISO感度を500まで下げることができた。
カメラ本体はX-H1.


レンズを含めるとXシリーズの方が軽くて安い

Xシリーズの特徴とメリット2点目は、レンズが軽い(しかも安い)点です。
例えば、筆者が星空撮影によく用いるXF16mm F1.4 R WRというレンズの場合、重量は375 gしかありません。SONYやSIGMAにおいて競合するレンズの場合、それぞれの重量は445 gや755 gになります。(表2参照)


表2 広角単焦点レンズの比較
レンズ名XF16mm
F1.4 R WR
FE 24mm
F1.4 GM
24mm F1.4
DG HSM
メーカー富士フイルムSONYSIGMA
焦点距離
(35mm換算)
24 mm24 mm24 mm
最小F値F1.4F1.4F1.4
重量375 g445 g755g
実売価格106,049円154,000円98,000円

また、高倍率ズームレンズの比較を表3に、超広角ズームレンズの比較を表4に示します。いずれのレンズにおいても、富士フイルム製レンズの重量が最軽量となっています。

この「富士フイルムのレンズが軽い」という特徴は、交換レンズをたくさん持ち歩くほど大きなメリットとなります。筆者が泊まりで登山に行く際には2本以上のレンズを持ち歩きます。登山においては荷物を軽くしたいので、大きなメリットになります。荷物が重くなると登山や撮影自体が苦行になりますし、最悪の場合には疲労が蓄積し怪我に繋がるリスクがあります。


表3 高倍率ズームの比較
レンズ名XF18-135mm
F3.5-5.6 R
LM OIS WR
FE 24-240mm
F3.5-6.3
OSS
メーカー富士フイルムSONY
焦点距離
(35mm換算)
27-206 mm24-240 mm
最小F値F3.5-5.6F3.5-6.3
重量490 g780 g
実売価格87,369円110,292円
(sigmaでは同様のレンズの取り扱い無し)

表4 超広角ズームレンズの比較
レンズ名XF10-24mm
F4 R OIS
FE 16-35mm
F4
ZA OSS
LUMIX S PRO
16-35mm F4
メーカー富士フイルムSONYSIGMA L-mount用
(Panasonic製)
焦点距離
(35mm換算)
15-36 mm16-35 mm16-35 mm
最小F値F4F4F4
重量410 g518 g500g
実売価格94,000円126,978円188,100円

冬山でもバッテリーが落ちない

Xシリーズの特徴とメリット3点目は、(一部の廉価機種を除き)気温が氷点下10℃を下回る雪山でもバッテリーが落ちない点です。

以下の写真にある北岳と星空を撮影した際、実気温は-15℃を下回っていましたが、X-T3で問題なく撮影をすることができました。(冬には空の霞みが取れて星空が綺麗に見えるのですが、撮影できなかったら残念な気持ちになりますよね)

1月の深夜に、ボーコン沢の頭から北岳を撮影。


また、厳冬期の八ヶ岳の稜線で撮影をした際、周囲の人のカメラやスマートフォンは電源が落ちるなか、筆者のX-T1では問題なく撮影をすることができました。Xシリーズの耐寒性能は-10℃まで保証されているのですが、実際にはこれより低い温度でも使えるということなのでしょう。

2月の八ヶ岳稜線にて。風雨が吹きすさび筆者のX-T1は雪に覆われたが、問題なく動作してくれた。


筆者はこれまでに20回以上雪山テント泊をしていますが、Xシリーズの電源が寒さで落ちたことは一度もありません。ちなみに、他社の-10℃まで動作保証されているカメラにおいては、雪山の明け方にはバッテリーが一時的に死んでいて電源が入らなくなったこともあります。

JPEG撮って出しの色が綺麗

Xシリーズの特徴とメリット4点目は、JPEG撮って出しの色が綺麗だという点です。
また、フィルムシミュレーションを使うことで、簡単に写真の彩度や階調を変えることができます。筆者はバリバリにRAW現像するというよりは、その時間があったら次の撮影や山行にいきたい!という派なので、これは大きなメリットだと感じています。

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また、この点においてはSIGMA fpにも利があります。SIGMA fpには13種類の豊富なカラーモードが搭載されており、フィルムシミュレーションのように手軽に彩度や階調を変更することができます。色にはかなりこだわったコンセプトのようです。

一方、SONYのカメラにおいては、一部ユーザーから「色があまり綺麗ではなく、RAW現像が必須」という声も聞きます。
(ただし、RAW現像を否定するわけではありません。筆者も一部風景や、星空写真においてはlightroomを使った現像作業を行っています)

APS-Cの2,600万画素で十分

Xシリーズの特徴とメリット5点目は、「APS-Cの2,600万画素があれば、実使用上では問題がない点」です。

ビルの壁などに大きく印刷したポスターを掲示するような用途であれば話は別ですが、家庭の4Kモニタで鑑賞する用途であれば、APS-Cどころかマイクロフォーサーズでも十分なセンサーサイズだと言われています。

フルサイズとAPS-C(やマイクロフォーサーズ)の画質の違いは、よほど拡大してみない限りは気が付かないレベルです。

(APS-Cの中では)高感度に強い

Xシリーズの特徴とメリット6点目は、APS-Cセンサーの中では高感度に強い点です。

これは、夜景や星空を撮影する場合に大きなメリットとなります。
というのも、星空を撮影する際には、「明るい広角レンズ」と「高感度に強いセンサー」が有利になってきます。Xシリーズにおいては、XF16mmF1.4 R WR等の明るいレンズを付けることで、綺麗に星空を撮影することが可能です。

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ただし、やはりXシリーズの高感度耐性が強いとはいっても、これは「APS-Cの中では」という注釈付きになってしまいます。星空撮影を第一に考えるのであれば、フルサイズセンサーを搭載したカメラを購入する方が無難でしょう。

まとめ

繰り返しになりますが、筆者の感じているXシリーズの特徴とメリットは以下の6点になります。

富士フイルムXシリーズの特徴とメリット

・各種調整ダイヤルが独立している→設定を素早く変更しやすい
・レンズが軽い→登山の荷物を軽くできる
・寒い場所でもバッテリーが落ちない→冬山登山でも問題なく撮影できる
・JPEG撮って出しの色が綺麗→RAW現像の手間を省ける
・APS-Cの2,600万画素であれば、実使用上問題無し
・APS-Cの中では高感度に強い→星空や夜景を(ノイズが少なく)綺麗に撮影できる

逆に、これらにあまりメリットを感じない場合には、フルサイズを選択する方が良いでしょう。例えば「カメラの絞りとシャッタースピードを同時にマニュアル設定することはあまりない」「レンズを1本しか持ち歩かない」「荷物が重くなっても負担を感じない」「そんなに寒い場所には行かない」「星空撮影を第一優先に考えている」「撮影した画像を必ずRAW現像したい」などの場合には、フルサイズに軍配が上がるでしょう。

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