夏と言えば打ち上げ花火の季節です。カメラを持っている人であれば、打ち上げ花火を写真に残したいと思うことでしょう。しかし、打ち上げ花火を撮影するためには特殊な道具やカメラ設定が必要となります。道具や設定を間違えると、ブレや白飛びのひどい写真となってしまいます。そこで今回の記事では、OMデジタルソリューションズ(旧オリンパス)が展開するOM SYSTEMのフラグシップ機・OM-1を使って打ち上げ花火を撮影するための機材、設定、方法を紹介します。
目次
機材
打ち上げ花火を撮影するために必要となる機材を紹介します。
三脚
剛性の高い三脚を用意します。
打ち上げ花火の撮影では、シャッターを長く開けることで花火の軌跡を写します。長いと60秒程度シャッターを開けていることもあります。よって、三脚が必須となります。剛性の弱い三脚ではブレてしまうため、剛性の高い三脚がオススメです。ミラーレスカメラの場合、目安としてパイプ径22mm以上あれば剛性には問題ありません。
レリーズシャッター
レリーズシャッターを用意します。
花火撮影では、花火が上がっているタイミングを目視して、シャッターを開いている時間をマニュアルでコントロールします。つまり、予め決めた秒数を撮影するわけではないので、撮影を終了する際にはシャッターを押す必要があります。この際にカメラ本体のシャッターボタンを押してしまうと、その瞬間に写真がブレてしまいます。よって、レリーズシャッターが必須となります。レリーズシャッターはメーカー純正のものではなく、コネクタの形さえあえばサードパーティーのもので問題ありません。
NDフィルター
ND8のND(減光)フィルターを用意します。
花火は明るいため、基準最低ISO感度が200のOM SYSTEMでは、普通に撮影するとF値を20以上に絞る必要が出てきます。ところが、F値を11以上に絞ると回折現象によって画質が悪化してしまいます。そこで、3段分の減光効果があるND8フィルターを付けることで、本来はF22にしなければならないところをF8にできるため、画質の悪化を防ぐことができます。尚、NDフィルターにはレンズに合った径のものを購入するようにしましょう。
尚、他社の基準最低ISO感度が160や100のカメラ本体では、2段分の減光効果のあるND4フィルターがおすすめです。
ズームレンズ
ズームレンズを用意します。
前述の通り、花火に明るいレンズは必要ありません。よって、単焦点レンズではなく、焦点域を変更できるズームレンズの方が使いやすいです。間近で花火を見る場合にはED 8-25mm F4.0 PROが、中距離の場合にはED 12-45mm F4.0 PROが、遠距離の場合にはED 12-100mm F4.0 IS PROなどが良いでしょう。いずれも小型軽量ながら画質に優れたF4通しのプロレンズとなっており、花火や夜景をきめ細やかに描写することができます。
もちろんキットレンズのED 14-150mm F4.0-5.6 IIでも撮影は可能です。4隅の解像力は若干落ちますが、中心部分ではプロレンズに匹敵する綺麗な写真を撮影することができます。
L字プレート
縦撮りをしたい場合には、L字プレートを用意しましょう。
三脚にカメラを縦位置でセットすると、重力でカメラの位置がずれたり、三脚が不安定になって倒れたりします。そこでL字プレートを使うことで、縦位置でも安定してカメラを三脚にセットできるようになります。各カメラ専用のL字プレートを用意できれば最もよいですが、汎用的なものでもかまいません。尚、各カメラメーカーはL字プレートを用意していないため、必然的にサードパーティーのものを選ぶことになります。
アルカスイス互換クイックシュー
前述のL字プレートを三脚に取り付けるために、アルカスイス互換クイックシューを用意しましょう。
三脚によってはそのままではL字プレートが取り付かないことがあり、この場合にはアルカスイス互換クイックシューを別途用意する必要があります。アルカスイス互換クイックシューはサードパーティー製の価格の安いものではなく、三脚メーカー純正のものをおすすめします。価格が安いものでは剛性が低く、撮影時にブレてしまったり、不意に角度が変わってカメラが落下してしまうことがあるためです。
カメラ設定
OM-1を元にして、打ち上げ花火を撮影するためのカメラ設定を紹介します。同社のこれ以前のカメラでは液晶画面のレイアウトは異なりますが、同様の設定をすることが可能です。また、他社のカメラでも考え方はほぼ同様であり、同様の設定をすることが可能です。
シャッタースピード→B(バルブ)
軍艦部右のシャッターダイヤルをB(バルブ)にしましょう。こうすることで、レリーズシャッターのボタンを最初に押してから、次に押す間だけシャッターが開くようになります。
さらに、カメラ背面右上のダイヤルを回し、BモードをLive Timeにしましょう。こうすることで、撮影中の画像の明るさが適時で液晶に表示されるようになるので、白飛びや花火の写りすぎを防ぐことができます。
MENUボタンを押した後、BulbLiveの更新タイミングを設定しましょう。このタイミングはシャッタースピードではなく、画面表示が何秒ごとに更新されるかという時間です。更新時間が短すぎると、撮影中に更新が止まってしまいます。筆者の場合には2秒か4秒にすることが多いです。
ISO感度→200
OKボタンを押し、ISO感度を常用感度の中では最低となる200にしましょう。撮影中に200で足りないと感じた場合には、拡張感度であるL(Low)にしてもよいです。
F値→5.6~11くらい(撮影しながら調整)
シャッターボタン下のダイヤルを回し、F値を5.6~11の間で調整しましょう。撮影した写真を見ながら調整します。
ホワイトバランス→オート
ホワイトバランスをオートにしておきましょう。初期設定でオートになっているため、初期設定から変更していないのであればそのままで構いません。
手振れ補正→OFF
手振れ補正をOFFにしましょう。三脚使用時に手振れ補正をONにしていると、手振れ補正が暴走することがあるためです。
長秒時ノイズ低減→OFF
MENUボタンを3回押し、背面右上のダイヤルを回し、「3.ISO/ノイズ低減」画面から長秒時ノイズ低減をOFFにしておきましょう。
これをONにしてしまうと、撮影後に撮影に掛かったのと同じ時間分のノイズリダクション時間が発生してしまいます。今回はISO感度の低い撮影なので、オフにしてもノイズは気になりません。
撮影方法と作例
以下に撮影方法と作例を紹介します。カメラ本体はOM-1, レンズはED 12-100mm F4.0 IS PRO、ND8フィルターを装着しています。
打ち上げ地点の近くにピントの合う明るい被写体がある場合には、この地点にオートフォーカスしてピントを合わせます。これが不可能な場合には、打ちあがった花火をマニュアルフォーカスで拡大してピントを合わせます。F値を大きくしてパンフォーカスの状態になっているため、ピント合わせはそれほど難しい作業ではありません。
さらに、1枚撮影するごとに写真をチェックし、花火が白飛びしているようであれば露出オーバーになっています。その場合にはF値を上げる、ISO感度をさらに下げるなどして対処します。以下に、うまく撮影できた作例をいくつか示します。いずれもjpeg撮って出しです。
花火撮影時にはRAWデータも保存しておくと良いです。よほどひどい白飛びでない限りは復元できる可能性が高いからです。
今回の記事は以上になります。