レンズ交換式カメラにおいて、「どのレンズを使えばいいのか、買えばいいのか」という疑問が付きものだと思います。
筆者は、マイクロフォーサーズのレンズを計7本所有していたことがあります。また、その他のマウントのレンズについては7本を所有しており、被写体や撮影シーン別にレンズを選択しています。
今回の記事では、被写体や撮影シーン別におすすめしたいマイクロフォーサーズレンズを紹介します。
・マイクロフォーサーズに興味があり、どのようなレンズがあるのか知りたい人
目次
レンズの選び方
レンズには様々な特性があります。
MTF特性曲線、レンズ枚数、F値、重さ、口径、焦点距離、防塵防滴、耐寒性、コーティング、などなど…
何を基準にして選べばいいか迷いますよね。
これらレンズの特性の中で最も重要なものは、「F値」と「焦点距離」の2つです。
なぜならば、F値と焦点距離によって、そのレンズが得意とする被写体が決まるからです。
よって、レンズを選ぶ際には、
「まず撮りたい被写体や撮影シーンを決める」
→「次に、F値と焦点距離を見てレンズを決める」とすればよいことになります。
F値や焦点距離については、以下記事をご覧ください。
尚、フォーサーズ規格の場合、レンズに記載している焦点距離が2倍となることに注意が必要です。
例えばM.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6というレンズの場合、焦点距離は18-36mmになります。これを35mm判換算の焦点距離と呼びます。
F値については、レンズに記載してある数字そのままとなります。上記レンズの場合、広角側での解放F値が4.0、望遠側での同値が5.6となることを表しています。
レンズラインナップの紹介
現在、マイクロフォーサーズ用のレンズとして以下の表の58種類がラインナップされています。(ただし、マニュアルフォーカスレンズ、3Dレンズを除く)
58種類のほとんどはオリンパスかパナソニック製となっています。(一部タムロンやシグマ製もあり)
カメラとレンズのメーカーが違っていても使うことができるのが、マイクロフォーサーズの特徴です。
シーン別、オススメレンズの紹介
シーン別におすすめしたいレンズを紹介します。
尚、今回は「風景を広く撮りたい」「風景の一部を切り取りたい」「動物」「スポーツ観戦」「ポートレート」「星空」「手持ち夜景」といった7つのシーンを想定しています。
風景を広く撮りたい
風景を広く撮るためには、焦点距離が短いレンズが良いです。というのも、前景、中景、遠景を1枚の写真の中に収めることができ、写真に奥行が出るからです。換算焦点距離20 mm以下のレンズがこの用途に適しています。また、風景相手では足を使って被写体と撮影者の距離を調整するのが難しいため、単焦点レンズよりもズームレンズの方が適しています。
以下に、換算焦点距離15 mmで撮影した作例を2つ示します。
これらの条件に該当するレンズは①~⑤の5つです。
明るさ(F値の小ささ)を重視するなら①を、軽さを重視するなら④を、明るさと軽さの両方を重視するなら③をオススメします。
次点として、換算焦点距離が24 mmのレンズも風景を広く撮る用途におすすめできます。
⑥~⑬のズームレンズ8つがこの条件に該当します。
これらのレンズは広角域に加えて中望遠~望遠域もカバーするため、風景撮影以外にも、後述する「風景の一部を切り取って撮る」用途にも使用可能です。
単焦点レンズとしては㊱~㊴の4つもおすすめできますが、ズームができないために撮れる画が限られてきます。
(ただし、単焦点レンズには小さなF値や高い解像度といった別のメリットも存在します)
風景の一部を切り取りたい
風景の一部を切り取るためには、目安として換算焦点距離40~200 mmが適しています。
風景と撮影者の距離を変えることは容易ではないため、単焦点レンズよりもズームレンズの方が適しています。
以下に作例を3つ示します。
この条件に該当するレンズには⑫、⑬、⑰、⑱、⑲の5つがあります。
軽さを重視するなら⑰~⑲を、焦点距離の広さを重視するなら⑬を、プロレンズとしての画質の良さを重視するなら⑫をおすすめします。
動物
動物と撮影者との距離を変えることには制約がある(近寄りすぎると動物が逃げるなど)ため、動物撮影には単焦点レンズよりもズームレンズの方が適しています。
中形の大きさの動物を撮るためには、目安として換算焦点距離400 mm以上が適しています。
この条件に該当するレンズは⑬、㉒、㉖~㉛の8つがあります。(㉒は、テレコンバーターを使うとF4通し換算440 mmのレンズとなります)
明るさを求めるなら望遠域でF4となる㉒や㉗を、焦点距離800mmの超望遠を求めるなら㉚や㉛を、軽さ・値段の安さ・焦点距離600mmを求めるなら㉘が良いでしょう。
一方、小型で尚且つ近くによれない動物(気に止まる小鳥、池の中央に浮かぶ水鳥)を撮るためには、換算焦点距離600mm以上のズームレンズが適しています。
この条件に該当するレンズは、下記「スポーツ観戦」で紹介するレンズと同じです。
スポーツ観戦
スポーツを撮影するためには、換算焦点距離600mm以上が望ましいです。
昼間の屋外スポーツの場合、㉚と㉛が最適です。これらは換算焦点距離200~800mmをカバーする超望遠レンズです。
屋内スポーツ、夜間スポーツを撮影する場合にはF値も重要な要素となってきます。これは、シャッタースピードを速くするために光の取り込み量が少なくなるからです。
この場合には、㉙や(57), (58)が最適となります。㉙は望遠端の解放F値5.6のズームレンズで、㉚や㉛よりも0.5段明るいです。(58)は600mmの単焦点レンズでズームではできませんが、F値は4となり㉚や㉛より1.5段明るいです。
(57)は付属のテレコンバーターを付けることでF4通の換算616mmのレンズになります。
㉘はF値が6.7と暗く焦点距離も600mm止まりのズームレンズですが、その分価格は安くサイズ・重量も比較的小さくコスパの良いレンズです。
ポートレート
明るいところでポートレート(人物撮影)をするためには、人の上半身や顔を切り取るために換算焦点距離50~90mmが最適です。被写体の1メートル近くまで近寄れるのであれば50mm, 2~3m離れてしまうのであれば70mm以上が良いです。
また、背景をボカすためにF2以下が良いです。(フォーサーズセンサーではフルサイズよりも2段ほど背景がボケにくいため、よりF値を低くする必要があります)
以下に作例を1つ示します。
この条件に該当するレンズはズームレンズでは⑤のみ、単焦点レンズでは㊻~(54)の計9つがあります。
これらの中でも最もF値の低い(=ボケやすい)レンズは㊻、(51)、(53)で、F値は脅威の1.2となります。
その分、値段が高く、サイズや重量も大きくなります。
一方、価格が安くサイズや重量が小さいのは㊽、㊾、(52)、(54)です。その分F値は1.7~1.8となりますが、背景はそれなりにボケます。上記の作例も(54)で撮影したものです。
㊼や㊿はレンズの明るさ(小さなF値)と重量、価格のバランスが良いレンズです。
⑤は重量が重く価格も高いですが、単焦点レンズ5本を合わせたような、使い勝手の良いレンズです。ポートレート以外にも広角で夜景を撮影したい場合にオススメしたいレンズです。
星空
星空撮影には「弱い星の光を集めるためにF値が小さいこと」と「焦点距離が小さいこと」の2つがレンズに求められます。
後者の理由は「焦点距離が短いほど、シャッタースピードを長くして露光を稼いでも星が流れにくい(=点として写る)」からです。
具体的な数値としては、F値は2.8以下、焦点距離は24mm以下が望ましいです。以下にレンズ㊱で撮影した星景写真の作例を2つ示します。
これらの条件を満たすレンズで最も性能の良いものは、⑤、㊱、㊳です。いずれもF1.8以下の明るい広角レンズです。
次点としては、①、③、㊴もおすすめです。①と③はF2.8とやや暗くなりますが、ズームレンズなので他の用途にも使いやすいです。
㊴は単焦点レンズで、F値が2.0に抑えられている代わりに軽量になっています。
手持ち夜景
手持ち夜景に適しているレンズは「星空」の項で紹介したものと同じです。
しいて言えば、⑫もおすすめです。
⑫は手振れ補正機能が優れており、オリンパスの一部カメラと組み合わせると7.5段の手振れ補正機能を発揮します。慣れた人であれば、広角側で4秒程度の手持ちが可能となります。
関連記事・商品の紹介
以下に関連記事や商品を紹介します。
埃の多い環境下でレンズを使う際には、保護フィルターを付けることをオススメします。レンズに付いたゴミを直に拭いてしまうとレンズを傷つけてしまいます。反射率がわずか0.3%のHAKUBA製「XC-PRO」であれば、画質の劣化はありません。コスパの高い保護フィルターです。(レンズの径にあったフィルターを選択しましょう)
カメラやレンズを通常環境に放置すると、数年後にはカビが生えてしまい画質に影響が出ます。一度生えたカビを除去することはとても困難です。カビが生える前に防湿庫で保管することをオススメします。
レンズキャップに紐を付けましょう。レンズキャップを落下させる場所によっては、回収できなくなります。
ブロワーを用意しましょう。レンズや保護フィルターに埃が付いても、ブロワーで拭き飛ばせば傷つくことはありません。
ブロワーで拭き飛ばせない汚れについては、レンズクロスで落としましょう。ティッシュで汚れを落とすと、高確率で傷がつきます。
登山中にはバッテリーが切れても充電することができません。特に、ミラーレスカメラは一眼レフよりもバッテリーの持ちが悪いです。そこで、モバイルバッテリーを持っていくと良いでしょう。
登山中にカメラを首から下げて持ち歩くと危ないですし、カメラも傷つきやすいです。そこで専用の携行方法をオススメします。
今回の記事は以上になります。