用途別・富士フイルム製レンズの選び方【風景、旅行、夜景、ポートレート、動物、スポーツ】

富士フイルムからは30本以上のレンズが発売されています。
「どのレンズを使えばいいのか、買えばいいのか」迷うと思います。

ずばり、用途を明確にしたうえで、レンズの焦点距離とF値を元にして選べば間違いありません。

筆者は、他社製のレンズを含めるとレンズを8本所有しており、被写体や撮影シーン別にレンズを選択しています。


今回の記事では、用途別に富士フイルム製レンズの選び方を紹介します。

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レンズの特性について

レンズには様々な特性があります。
MTF特性曲線、レンズ枚数、F値、重さ、口径、焦点距離、防塵防滴、耐寒性、コーティング、などなど…
何を基準にして選べばいいか迷いますよね。

これらレンズの特性の中で最も重要なものは、「F値」と「焦点距離」の2つです。
なぜならば、F値と焦点距離によって、そのレンズが得意とする被写体が決まるからです。

よって、レンズを選ぶ際には、
「まず撮りたい被写体や撮影シーンを決める」
→「次に、F値と焦点距離を見てレンズを決める」とすればよいことになります。

レンズの紹介に移る前に、F値と焦点距離について概要を説明します。
F値と焦点距離についてすでにご存じの方は、以下をスキップして本記事の2項に移動願います。

焦点距離とは

焦点距離が長くなるほど遠くの被写体に強くなり、遠くの被写体をアップで捉えることができます。
一方、焦点距離が短くなるほど風景撮影に強くなり、風景全体を1枚の写真に収めることができます。

焦点距離の基準は50mmです。
焦点距離が50mm前後のレンズは標準レンズ、これよりも短いものは広角レンズ、長いものは望遠レンズと呼ばれます。

焦点距離の短い広角レンズは風景撮影に、
焦点距離50mm付近の標準レンズはポートレート(人物撮影)などに、
焦点距離の長い望遠レンズは遠くの被写体や小さな被写体を切り取る撮影に向いています。

以下に、各焦点距離で撮影した作例を載せます。

紅葉の立山を換算焦点距離15mm(広角)で撮影。


山小屋で休憩する登山者を、換算焦点距離53mm(標準)で撮影。


岩の上でたたずむ雷鳥を、換算焦点距離300mm(望遠)で撮影。


レンズの焦点距離の判別方法

この焦点距離は何を見ればわかるのでしょうか。

レンズの商品名を見れば、焦点距離が記載されています。
例えば、富士フイルムの「XF18-135mmF3.5-5.6 R LM OIS WR」というレンズの場合、焦点距離を18-135mmまで変えられることを示します。
このように焦点距離を変えることのできるレンズをズームレンズと呼びます。




また、XF16mmF1.4 R WRというレンズの場合、焦点距離が16mmで固定されていることを示します。
このように焦点距離を変えられないレンズを単焦点レンズと言います。
単焦点レンズの場合、焦点距離を変えられない代わりに、重量が軽い、暗いところに強い、背景をボカしやすいなどのメリットがあることが多いです。




注意点としては、この値をそのまま一般的な焦点距離として用いることはできないことです。
富士フイルムの場合、レンズの商品名に記載されている焦点距離を約1.5倍したものが、換算の焦点距離となります。
詳細については省きますが、この1.5倍した換算の焦点距離が実用上大事になってきます。

例えば、「XF18-135mmF3.5-5.6 R LM OIS WR」 の場合、換算の焦点距離は27-206mmとなります。

焦点距離の詳細については、以下記事をご覧ください。

F値とは

F値はレンズの明るさを示し、値が小さいほど光を多く取り込めることを示します。
値が1.4倍小さくなるにつれて、光を2倍取り込みやすくなります。

F値が小さいレンズには2つのメリットがあります。

1つ目は、暗いところでの撮影に強くなることです。
これは理解しやすいと思います。

2つ目は、動いている被写体を止めて撮影しやすくなることです。
これはどういうことかというと、動いている被写体の場合にはシャッタースピードを速くする必要があります。シャッタースピードを速くするとその分光を取り込みにくくなるため、この足りなくなった光を、F値を下げて補う必要がある、ということになります。

レンズのF値の判別方法

F値は何を見ればわかるのでしょうか。

レンズの商品名を見ると、F値が記載されています。
例えば富士フイルム製「XF16mmF1.4 R WR」というレンズの場合、F値を1.4まで下げられることを示します。
(一方、上限は記載されていませんが、これについてはあまり気にする必要がありません)

また、「XF18-135mmF3.5-5.6 R LM OIS WR」というレンズの場合、焦点距離18mmではF値を3.5まで、焦点距離135mmではF5.6まで下げられることを示します。
(昔、理科の実験で顕微鏡をのぞいたときに、拡大するほど視野が暗くなる経験をした方がいると思います。これと同じ原理で、レンズが望遠側になるほどF値が高く=暗く、なります)

焦点距離についての詳細は以下記事をご覧ください。

シーン別、オススメレンズ

前起きが長くなりましたが、以下に被写体や撮影シーン別に富士フイルムのおすすめレンズを紹介します。

用途:風景を広く撮りたい

風景を広く撮るためには、焦点距離が短いレンズが良いです。
換算焦点距離24~27mm以下のレンズがこの用途に適しています。

これに該当するレンズは、⑰XF8-16mmF2.8 R LM WRや、⑱XF10-24mmF4 R OISです。

⑰は換算で12-24mmを、⑱は換算で15-36mmをカバーする超広角ズームレンズです。

⑱XF10-24mmF4 R OISにて、木曽駒ケ岳の登山道を撮影。
焦点距離は換算15mm

XF10-24mmF4 R OISにて、立山の稜線を撮影。
焦点距離は換算15mm

このほかには、⑲XF16-55mmF2.8 R LM WR(換算24-84mm)や⑳XF16-80mmF4 R OIS WR(同24-122mm)や㉒XF18-135mmF3.5-5.6 R LM OIS WR(同27-206mm)もオススメです。
これらは広角域に加えて中望遠~望遠域もカバーするため、風景撮影以外にも、後述する「風景の一部を切り取って撮る」用途にも使用可能です。

㉒XF18-135mmF3.5-5.6 R LM OIS WRにて、裏銀座縦走路を撮影。
焦点距離は換算27mm

用途:風景の一部を切り取って撮りたい

風景の一部を切り取るためには、換算焦点距離40~90mmが必要です。
これに該当するレンズは13種類あります。
どれを選んでも大差はないでしょう。
しいて言うのであれば、風景撮影と両立可能な⑲XF16-55mmF2.8 R LM WR(換算24-84mm)、⑳XF16-80mmF4 R OIS WR(同24-122mm)、㉒XF18-135mmF3.5-5.6 R LM OIS WR(同27-206mm)が良いでしょう。

用途:ポートレート(昼間)

明るいところでポートレート(人物撮影)をするには、人の上半身や顔を切り取るために換算焦点距離50~90mmが最適です。また、背景をボカすためにF値が2以下が良いです。

これらを満たすレンズで最も良いものは、

⑧XF35mmF1.4 R(換算53mm)
⑪XF56mmF1.2 R(同85mm)
⑫XF56mmF1.2 R APD(同85mm)

です。

上記3レンズは性能が高いぶん、価格が高く、大きくて重いです。
これらのデメリットを許容できない場合には、

⑨XF35mmF2 R WR(同53mm)
⑩XF50mmF2 R WR(同76mm)
⑬XF60mmF2.4 R Macro(同91mm)

も良いです。

被写体の1mあたりまで近づけるのであれば⑧か⑨を、被写体から2~3m離れてしまうのであれば⑩~⑬を選びましょう。

⑨XF35mmF2 R WRにて、1mの距離から登山者の上半身を撮影。
焦点距離は換算53mm, F=2.0


なお、⑫の商品名に記載されているAPDとはアポダイゼーションフィルターのことで、ボケを柔らかくする効果があります。APDが付いているからといって必ずしも優れているというわけではなく、好みによって⑪と⑫のレンズのどちらかを選択するのが良いでしょう。

ズームレンズであれば、⑲XF16-55mmF2.8 R LM WR(換算24-84mm)や㉓XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR(同76-213mm)もオススメです。
単焦点レンズよりもF値が大きいためボケ量は小さくなりますが、焦点距離を自由に変えられるため構図の自由度が上がります。

用途:ポートレート(夜)

暗いところでポートレート(人物撮影)をするには、焦点距離が換算50~85mmで、なおかつ光を集めるためにF値が2.0以下のレンズがオススメです。

これらを満たすレンズで最も性能の良いものは、
⑧XF35mmF1.4 R(換算53mm)や、⑪XF56mmF1.2 R(同85mm)、⑫XF56mmF1.2 R APD(同85mm)
になります。

上記3レンズの重さ、大きさ、価格を許容できない場合には、
⑨XF35mmF2 R WR(同53mm)
⑩XF50mmF2 R WR(同76mm)
も良いでしょう。

F値が2.0以下になってくると、わずかな街明かりでもかなり明るいポートレートを撮影できます。

⑨XF35mmF2 R WRにて夜のポートレート撮影。
暗くても問題なく撮れちゃいます。

F2.0, ss1/125, ISO6400

用途:動物撮影

動物をアップで撮影するためには、換算焦点距離300mm以上が好ましいです。
(200mmでも撮影はできますが、トリミングが必要になることが多いです。しかし、意外にも1/4程度トリミングしても画質の悪化に気付く人は少ないです)

ゴリラやワニのように大きな動物や、雷鳥やフラミンゴのように小さいけれど(警戒心が薄く)近くまで近づける動物の場合には、300mmあれば十分です。
一方、オコジョや小鳥のように小さく近くまで近づけない場合には500mm以上が必要になってきます。
(同様に300mmでも撮影はできますが、トリミングが必要になることが多いです。しかし、意外にも1/4程度トリミングしても画質の悪化に気付く人は少ないです)

F値に関しては、小さいほど良いです。
これは、シャッタースピードを小さくして動く動物をブレずに撮影できる為です。

さて、前起きが長くなりましたが、この用途に最も適したレンズは⑯XF200mmF2 R LM OIS WRか㉕XF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WRです。

⑯は換算305mmの超望遠に加えて、F2.0の明るさを誇ります。
㉕についてはF値は4.5-5.6と大きいですが、焦点距離は152-609mmまでをカバーする超望遠レンズです。

ただし、上記2レンズは価格も大きさも重量も化け物級のレンズです。
手を出したら諭吉が大量滑落するでしょう。

そのような場合には、次点として㉔XF55-200mmF3.5-4.8 R LM OISや㉘XC50-230mmF4.5-6.7 OIS IIをオススメします。

そこまで明るくなく、焦点距離も㉕に比べれば劣りますが、換算で300mm以上をカバーできます。
明るい場所であれば全く問題はありません。

岩の上でたたずむ雷鳥を、換算焦点距離300mm(望遠)で撮影。
(レンズは他社製)

ss1/500, ISO250, F5.6


用途:野球観戦

野球観戦には、遠くにいる選手をアップで撮るために換算600mm以上の焦点距離が求められます。

これを満たすレンズは㉕XF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WRになります。

内野席から、換算焦点距離700mmの超望遠レンズにてバッターを撮影。
(レンズは他社製)

ss1/500, ISO4000, F5.9


内野席から、換算焦点距離800mmの超望遠レンズにて外野手を撮影。
(レンズは他社製)
ss1/500, F6.3, ISO6400


用途:星空

星空撮影には、「弱い星の光を集めるためにF値が小さいこと」と、「焦点距離が小さいこと」が求められます。
前者は理解しやすいと思いますが、後者は理解しにくいでしょう。
理由は、「焦点距離が短いほど、シャッタースピードを長くして露光を稼いでも星が流れにくい」からです。

これらを満たすレンズは②XF16mmF1.4 R WRや⑰XF8-16mmF2.8 R LM WRです。

②はF1.4の超明るいレンズ、⑰はF2.8と明るさでは一歩譲りますが、焦点距離12mmの超広角レンズでシャッタースピードを稼ぐことが可能です。

②XF16mm R WRにて、残雪の鹿島槍ヶ岳と星空を撮影。
F1.4, ss20, ISO800


②XF16mm R WRにて、燧ケ岳と星空を撮影。
F1.4, SS30, ISO500


用途:手持ち夜景

手持ち夜景には、光を集めるためにF値が小さいことと、手振れを防ぐために焦点距離が短いことが求められます。(焦点距離が短いほど手振れしにくくなります)

これを満たすレンズは②XF16mmF1.4 R WRです。換算焦点距離が24mmと短く、なおかつF1.4の超明るいレンズとなります。

イルミネーションやブルーアワーの撮影において、手持ち撮影をしても50%以上の確率で手振れしていない写真を撮れるでしょう。

②XF16mmF1.4 R WRにて、夜明け前のマジックアワーを手持ち撮影。

f:1.4, ss:1/30, iso:800

また、⑳XF16-80mmF4 R OIS WRもオススメです。
このレンズはF4と暗いレンズではありますが、6段分の超強力な手振れ補正を備えています。広角側においては普通の人で1秒、慣れた人であれば2秒の手持ち撮影が可能であり、その分光を多く集めることができるため暗所に強くなります。

まとめ

これまで紹介したレンズの一覧表を以下に示します。

Noレンズ種類レンズ名換算焦点
距離
風景を広く
撮りたい
風景の一部を
切り取って撮りたい
動物ポートレート
(昼間)
ポートレート
(夜)
野球観戦星空手持ち夜景
単焦点XF14mmF2.8 R21mm
単焦点XF16mmF1.4 R WR24mm
単焦点XF16mmF2.8 R WR24mm
単焦点XF18mmF2 R27mm
単焦点XF23mmF1.4 R35mm
単焦点XF23mmF2 R WR35mm
単焦点XF27mmF2.841mm
単焦点XF35mmF1.4 R53mm
単焦点XF35mmF2 R WR53mm
単焦点XF50mmF2 R WR76mm
単焦点XF56mmF1.2 R85mm
単焦点XF56mmF1.2 R APD85mm
単焦点XF60mmF2.4 R Macro91mm
単焦点XF80mmF2.8 R LM OIS WR Macro122mm
単焦点XF90mmF2 R LM WR137mm
単焦点XF200mmF2 R LM OIS WR305mm
ズームXF8-16mmF2.8 R LM WR12-24mm
ズームXF10-24mmF4 R OIS15-36mm
ズームXF16-55mmF2.8 R LM WR24-84mm
ズームXF16-80mmF4 R OIS WR24-122mm
ズームXF18-55mmF2.8-4 R LM OIS27-84mm
ズームXF18-135mmF3.5-5.6 R LM OIS WR27-206mm
ズームXF50-140mmF2.8 R LM OIS WR76-213mm
ズームXF55-200mmF3.5-4.8 R LM OIS84-305mm
ズームXF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WR152-609mm
ズームXC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ23-69mm
ズームXC16-50mmF3.5-5.6 OIS II24-76mm
ズームXC50-230mmF4.5-6.7 OIS II76-350mm

◎…最適
〇…適
△…やや適
空欄…適していない


今回の記事で紹介したレンズについては、以下の本に実写レビューが掲載されています。



レンズを購入する際には、各ネットショップをうまく活用することで、数千円~数万円安く購入することが可能です。

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レンズと合わせて購入したい品

レンズと合わせて用意しておくと良い品を以下に紹介します。


埃の多い環境下でレンズを使う際には、保護フィルターを付けることをオススメします。レンズに付いたゴミを直に拭いてしまうとレンズを傷つけてしまいます。反射率がわずか0.3%のHAKUBA製「XC-PRO」であれば、画質の劣化はありません。コスパの高い保護フィルターです。(レンズの径にあったフィルターを選択しましょう)



カメラやレンズを通常環境に放置すると、数年後にはカビが生えてしまい画質に影響が出ます。一度生えたカビを除去することはとても困難です。カビが生える前に防湿庫で保管することをオススメします。

防湿庫の選び方とおすすめメーカー・機種の紹介
カメラやレンズを、カメラバッグに収納しっぱなしの人は多いのではないでしょうか。この状態だと、数年後にはカメラやレンズにカビが生えます。カメ...



レンズキャップに紐を付けましょう。レンズキャップを落下させる場所によっては、回収できなくなります。



ブロワーを用意しましょう。レンズや保護フィルターに埃が付いても、ブロワーで拭き飛ばせば傷つくことはありません。



ブロワーで拭き飛ばせない汚れについては、レンズクロスで落としましょう。ティッシュで汚れを落とすと、高確率で傷がつきます。



登山中にはバッテリーが切れても充電することができません。特に、ミラーレスカメラは一眼レフよりもバッテリーの持ちが悪いです。そこで、モバイルバッテリーを持っていくと良いでしょう。



登山中にカメラを首から下げて持ち歩くと危ないですし、カメラも傷つきやすいです。そこで専用の携行方法をオススメします。

カメラの持ち運び方法2選【登山】
山登りにおいて、一眼レフやミラーレスカメラを使うと美しい景色を写真に残すことができます。一方で、これらのカメラのサイズは大きく重量も重いた...




尚、今回の記事では結婚式やスポーツ撮影向きのレンズを紹介していません。
これは、筆者がこの分野にあまり詳しくない為です。

今回の記事は以上になります。

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