漠然と写真を撮ると、奥行き感のない平面的な写真となってしまいます。そこで、写真に近景、中景、遠景を入れることで、奥行き感のある写真を撮ることができます。
今回の記事では、筆者の撮影した写真を元に、近景、中景、遠景を取り入れた写真を撮る際のコツについて紹介します。
尚、本記事はミラーレスカメラや一眼レフカメラユーザー向けに書いていますが、スマートフォンやコンデジで撮影をする際にも使える内容となっています。
写真の良さは、カメラの性能よりも撮影者の腕(構図を決める能力)に頼る部分が大きいです。
目次
コツ(must)
写真解説に入る前に、撮影上のコツについて説明します。
F8以上に絞ろう
F値を最低でもF8以上に絞り、写真奥行全体に渡りピントを合わせましょう。
これは、いわゆるパンフォーカスと呼ばれる方法です。レンズが解放に近くなる(=F値が小さくなる)ほど、前景か背景がボケてしまいます。(いわゆるピンフォーカス)
尚、センサーサイズの小さなコンデジやスマートフォンを使っている場合、この点については気にする必要がありません。カメラの仕組み上、センサーサイズが小さい場合には特に気にせずとも全体にピントが合います。
絞りとF値については以下記事をご参照ください。
ピントを中景に合わせよう
ピントを中景や、中景~近景の間に合わせましょう。
こうすることにより、前景と遠景にもピントが合うようになります。
広角レンズを使おう
広角レンズを使いましょう。(単焦点レンズよりも、広角ズームレンズの方が距離を調整しやすいためおすすめです)
広角レンズを使うことで前景を入れやすくなります。標準以上の焦点距離のレンズでは、前景を入れることが厳しくなります。また、望遠レンズを使ってしまうと、圧縮効果により写真に奥行き感が無くなります。
尚、スマートフォンや通常のコンデジを使っている場合には、最も景色が広く写る倍率で撮影すればOKです。
焦点距離については以下記事をご参照ください
コツ(better)
以下に「できることなら守った方がいい」コツを記載します。
すべてのコツを守る必要はありません。なぜならば、すべてのコツを守ることのできるロケーションにはなかなか巡り合えないため、撮影機会を損失するためです。
中景には奥行を持たせよう
中景は、前後方向に距離があるものが望ましいです。(例:手前から奥に伸びる稜線など)
これによって、中景が近景と遠景とを繋ぐ役割を果たします。
近景はなるべく写真のフチにアップで配置しよう
近景をなるべく写真の下側の縁にアップで配置しましょう。近景が遠くにあると、中景との差別化ができず、中途半端な奥行き感となってしまいます。
他の構図も取り入れよう
三分割法や、四分割法など他の構図のテクニックも取り入れましょう。写真がよりよく見えます。三分割法については、以下記事をご参照ください。
「近景」「中景」「遠景」2要素だけでもOK
近景、中景、遠景の3要素をすべて取り入れることのできる機会は少ないです。よって、まずはこれら3要素のうち2要素を入れることを目指しましょう。2要素であれば撮影機会は多いです。
写真紹介
前置きが長くなりましたが、筆者が撮影した写真の紹介に移ります。
北岳に向かう登山者
上の写真は、厳冬期の北岳と、そこに向かう登山者を撮影したものです。この写真を近景、中景、遠景に分解してみましょう。
分解したものが上記になります。
近景は登山者です。写真において、登山者の進行方向に広い空間があることがポイントです。
これによって、写真に広がりが出ます。
遠景は、大迫力の北岳バッドレスです。
中景は雪をかぶった登山道です。中景は前後方向に距離を持っているため、近景と遠景とをつなぐ役割を果たしています。
尚、この写真には三分割法とよく似た四分割法も使われています。登山者は、四分割法における左下交点に位置します。北岳は、四分割法における右上交点に位置します。
朝日に染まるテント場
上の写真は、朝日とそれを浴びるテント場を撮影したものです。この写真を近景、中景、遠景に分解してみましょう。
分解したものが上記になります。
近景はテントです。テントが画面左下にアップで写っているため、迫力が出ています。もっと遠くから撮影していたら、テントが写真から遠ざかり中途半端な写真となっていたでしょう。
遠景は、朝日と、朝日を受けて影となった山並みです。中景は雪をかぶった稜線です。
尚、この写真には三分割法も使われています。テントが、左下交点に位置します。遠景の山並みと地平線との境界が、上の横線上に位置しています。
快晴の裏銀座縦走路
上の写真は、裏銀座縦走路と、縦走路を歩く登山者を撮影したものです。この写真を近景、中景、遠景に分解してみましょう。
分解したものが上記になります。
近景は、登山者と手前の岩です。岩が写真手前にアップで広がって写っているため、迫力が出ています。
遠景は、北アルプスの山並みです。
中景は裏銀座縦走路です。縦走路が手前から奥に向かって伸びているため、近景と遠景とを繋ぐ役割を果たしています。
東天狗岳から西天狗岳を望む
上の写真は、東天狗岳を撮影場所として、西天狗岳を撮影したものです。この写真を近景、中景、遠景に分解してみましょう。
分解したものが上記になります。
近景は稜線上の岩です。岩が写真手前にアップで広がって写っているため、迫力が出ています。遠景は、西天狗岳の頂上です。
中景は、東天狗岳と西天狗岳とを繋ぐ稜線です。中景は徐々に遠ざかっていくため、近景と遠景とをつなぐ役割を果たしています。
尚、この写真には三分割法も使われています。左下と右上の交点には、変曲点が位置しています。遠景の山並みと空との境界が、上の横線上に位置しています。
今回の記事は以上になります。近景、中景、遠景を同時に撮影できる機会は少ないですが、ぜひチャンスを伺ってみてください。これまでとは違う写真が撮れるはずです。