登山用カメラレンズの選び方~焦点距離編~

レンズ交換式のカメラでは、その名の通りレンズを交換することができます。

しかし、レンズの選択肢が多すぎて「どのレンズを使えばいいかわからない」という方も多いと思います。レンズの特徴は、主に焦点距離とF値によって変わります。よって、まずは撮りたい被写体を決定し、次に焦点距離とF値を決めればよいということになります。

今回の記事では、このうちの焦点距離に着目し、被写体別におすすめとなる焦点距離を紹介します。

この記事や、この記事の最後で紹介する関連記事を読むことで、撮りたい被写体に応じて適切なレンズを選べるようになります。

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焦点距離の観点から見たレンズの分類と特徴

以下の表に「焦点距離」と「得意とする被写体」との関係を示します。

表 各焦点距離が得意とする被写体

レンズの
分類
焦点距離
(35mm判換算)
得意とする
被写体
特徴
超広角24mm
以下
・樹林
・稜線
・複数の山
・山の全体
・被写体が写真の端から中央に
向かって収束する(パース効果)
・写真の遠近感が強くなる
広角24~30mm同上
標準50mm
前後
・ポートレート
・山の一部の切り取り
中望遠100mm前後・山の一部の切り取り
・人物とその背後の
山の同時撮影
写真の遠近感が弱くなる
(圧縮効果)
望遠200mm前後・大きな動物
(雷鳥、猿など)
同上
超望遠400mm
前後
・小動物
(小鳥など)
同上


なお、細かい説明は省きますが、焦点距離は商品名やレンズに印字してある数字ではなく、35mm判換算の焦点距離が実用上大事になってきます。換算の焦点距離を調べる方法は2つあります。1つは、メーカーのホームページで調べる方法です。2つ目は、センサーサイズを元に自分で計算をする方法です。センサーサイズがフォーサーズの場合2倍、APS-Cの場合1.5倍、フルサイズの場合には1倍になります。例えば、APS-Cサイズのセンサーを持つカメラに焦点距離が16mmのレンズを付けた場合、換算の焦点距離は16mm×1.5=24mm, ということになります。

今回の記事では、各焦点距離のレンズで撮影した作例を元にして、レンズの焦点距離の選び方を紹介していきます。

超広角域

換算焦点距離24mm以下は、超広角域に分類されます。

超広角レンズは「樹林」「稜線」「複数の山」「1つの山の全体」の撮影に適しています。
超広角レンズで撮影した写真では、写真端の被写体が写真中央に向かって収束します。これをパース効果と呼び、実際に目で見た景色よりも広い空間に感じます。壮大な写真を作りたいときに最適です。以下に作例を示します。

厳冬期の南八ヶ岳にて、樹林を見上げて撮影した作例。
木の幹が写真端から中央に向かって収束している。焦点距離15mm

超広角域は、遠近感を強めたい場合にも有効です。以下に、焦点距離16mmのレンズを使って、チングルマが咲く旭岳を撮影した作例を示します。木道の上から、なるべくチングルマに近寄って撮影をしました。こうすることでチングルマが手前に大きく広がり、奧の旭岳は小さく写ることで遠近感の強い写真となりました。

焦点距離16mmのレンズを使い、チングルマと旭岳を撮影。
手前に広がるチングルマの花畑を広く写すことができた。ただし、木道からはみ出したり、花を踏みつけることはやめましょう。


以下に、広角域の換算27mmのレンズを使って、上記と同じ被写体を撮影した参考例を示します。上の写真と比べて、下の写真では遠近感が弱くなっていることがわかるかと思います。

27mmで撮影した参考例。


広角域

換算焦点距離24~30mmは、広角域に分類されます。

広角域は、超広角域と同様に「樹林」「稜線」「複数の山」「1つの山の全体」の撮影に適しています。広角域で撮影した写真は、撮影者の感覚と近くなります。

以下に作例を示します。

7月の朝日連峰の稜線を撮影した作例。稜線全体を撮影できる。焦点距離24mm


残雪期の白馬岳と星空を撮影。焦点距離24mm


7月の裏銀座・縦走路(北アルプス)の稜線を撮影した作例。焦点距離27mm

超広角域と広角域はどちらも、得意とする被写体は同じです。しかし、超広角域は写真上に余計なモノが写りやすいため、使いこなすのが難しいです。多くの場面では広角域の方が使いやすいでしょう。

標準域

換算焦点距離50mm前後は、標準域に分類されます。

標準域は、ポートレート撮影(人物撮影)に向いています。人の上半身のみを切り取って撮りたいときに最適です。以下に作例を示します。

八ヶ岳の山小屋にて談笑中の登山者の上半身を切り取った作例。焦点距離53mm

標準域は、山の一部を切り取るのにも最適です。以下に作例を示します。

モルゲンロートに染まる北岳のバッドレスを切り取った作例。焦点距離62mm

中望遠域

換算焦点距離100mm前後は、中望遠域に分類されます。

中望遠域で撮影した写真では前後方向の距離感が狭まることにより遠近感が弱くなります。これを圧縮効果と呼び、人物のすぐ背後に山があるように錯覚する写真を撮ることができます。
以下に作例を示します。

7月の表銀座縦走路にて、水晶岳をバックに登山者を撮影した作例。
背後の水晶岳が近くに見えるように錯覚する。焦点距離90mm

上記と同じ位置関係にて、焦点距離70mmで撮影した参考例。
圧縮効果が弱くなり、その分背後の水晶岳が遠くに見える。

望遠域

換算焦点距離200mm前後は、望遠域に分類されます。
望遠域は、比較的サイズの大きな動物を撮るのに最適です。

以下に作例を示します。

4月末の白馬連峰にて、冬毛の雷鳥(オス)を撮影した作例。焦点距離203mm

200mm前後の焦点距離は、遠くの山を撮るのにも最適です。以下に、焦点距離200mmのレンズを使って、北アルプス・立山の山中から、直線距離で100km離れた位置にある白山を撮影した例を示します。かなりアップで撮影できていることがわかるかと思います。ただし、これくらい距離が離れると大気の霞みの影響を受けます。晴れていても大気の霞みがひどいと、遠くの山を撮影することはできません。

超望遠域

換算焦点距離400mmは、超望遠域に分類されます。
超望遠域は、小鳥などの小動物を撮るのに向いています。

以下に作例を示します。

4月の御嶽山にて。岩場の上で羽を休める小鳥を撮影した作例。焦点距離406mm

今回の記事は以上になります。
山岳撮影におけるレンズの焦点距離の選び方について、如何でしたでしょうか。

次回はレンズの絞り(F値)と写真の関係について解説します。

F値(絞り)とレンズの選び方【山岳撮影】
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