登山においてコンデジではなく一眼カメラを使うと、風景をより美しく撮ることができます。一眼カメラの中でも、ミラー構造を省いたミラーレスカメラは小型・軽量のため登山に最適です。しかし、2023年現在、各社から様々なミラーレスカメラが販売されており、どれを選んだらいいかは分かりにくいです。筆者はこの7年間ほど山で各社のミラーレスカメラを使っており、この経験から「重量」「防塵防滴性・耐寒性」「レンズの焦点距離」などに着目すると選びやすくなると言えます。今回の記事では、登山向けのミラーレスカメラの選び方と、オススメのカメラレンズキットを紹介します。
目次
選び方
登山向けミラーレスカメラの選び方を以下に紹介します。
レンズキット
レンズとセットになって販売している商品(いわゆるレンズキット)が良いです。
理由は、カメラ本体とレンズと別々に購入するよりも価格が安くなるからです。組み合わせによっては数万円安くなることもあります。
重量
重量の軽いカメラ本体とレンズ一式が良いです。
カメラ本体とレンズセットで1kg以下のものを選ぶと持ち運びやすいです。うまく選べば600gと、500mLペットボトルよりもやや重い程度の本体とレンズのセットもあります。
防塵防滴性
可能であれば、防塵防滴性の付いたカメラ本体やレンズが良いです。
山では埃が舞うので、カメラやレンズ内部に埃が入ってしまうことを防止できるためです。
耐寒性
可能であれば、耐寒性のあるカメラ本体が良いです。
春や秋にアルプスに一泊二日以上で登る場合、早朝や未明には気温は低下し、場合によっては氷点下まで下がることもあります。通常のカメラでは電源が入らなくなったり、動作が不安定になって誤作動を起こすこともあるためです。
焦点距離
レンズによって焦点距離が異なり、得意とする被写体が異なることに注意が必要です。
焦点距離が小さくなるほど広角に撮れる、つまり風景撮影に有利で、大きくなるほど望遠で撮れる、つまり動物や景色の拡大撮影に有利になります。広角を重視するなら、27mmではなく24mm始まりのレンズの方が良いです。望遠を重視するのであれば、50や60mmではなく90mm以上のレンズの方が良いです。レンズの焦点距離と得意な被写体との関係については、下記記事をご覧ください。
(補足1)センサーサイズ
カメラによってセンサーサイズが異なり、センサーサイズによってメリット・デメリットが変わります。以下の通り補足しておきます。
センサーサイズが大きいほど、明暗差のある場面で白飛びや黒潰れなく撮影できたり、暗所でノイズが出にくくなるメリットがある一方で、カメラが大型・高価格化します。センサーサイズが小さいほど上記のメリットが薄れる一方で、カメラが小型化・低価格化します。ミラーレスカメラのセンサーサイズは「(マイクロ)フォーサーズ<APS-C<フルサイズ」の順に大きくなります。世の中にはフルサイズ信仰もありますが、一般的な用途ではフォーサーズであれば十分です。
(補足2)画素数
カメラ本体の性能の1つとして画素数があります。画素数が多いほどきめ細やかな描写が可能となります。カメラによっては2000万画素のものもあれば、5000万画素のものもあります。しかし、現在のカメラは画素数についてはオーバースペックです。なぜならば4Kモニタを使っていたとしても、求められる解像度は約800万画素でしかないからです。高画素が求められるのはトリミングしたい場合や、大きく引き伸ばして印刷したい場合です。よって、本記事では画素数については着目していません。
おすすめミラーレスカメラキットの紹介
前置きが長くなりましたが、以下に登山向けのミラーレスカメラキットを紹介します。
OM-5(OMデジタルソリューションズ)
1機種目はOMデジタルソリューションズ(旧オリンパス)製のOM-5(12-45mm F4.0 PRO レンズキット)です。
OM-5の特徴は、フォーサーズセンサーのメリットを活かして、わずか414gという軽量のボディーに、防塵防滴性、-10℃までの耐寒性、優秀なボディ内手振れ補正などの機能を詰め込んでいることです。この防塵防滴性は他社に比べて優れており、IP53やIPX1という規格に準拠したものになっています。どれくらいすごいかというと、ホームページにもあるように、カメラに直接水滴を吹きかけても動作を保証してくれるほどです。小雨でも安心して使えます。
キットレンズとなっている12-45mm F4.0 PROについても254gと軽量であり、IPX1の防滴性を保証しています。焦点距離としては広角24mm~中望遠の90mmをカバーしており、風景写真の他にもポートレートにも最適です。
・重量(レンズ)…254g
・防塵防滴性(本体)…有(IP53, IPX1)
・防塵防滴性(レンズ)…有(IPX1)
・耐寒性… -10℃
・焦点距離(35mm判換算)…24-90mm(広角~中望遠)
・センサーサイズ…フォーサーズ
尚、OM-5にはED 14-150mm F4.0-5.6 IIとセットになった別のレンズキットが発売されており、こちらのレンズでは焦点距離の広角側が短くなり、望遠側が長くなっていることが特徴です。撮りたい被写体に合わせてレンズキットを選択すると良いでしょう。
X-T5(富士フイルム)
2機種目は富士フイルム製のX-T5(XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS レンズキット)です。
X-T5の特徴は、557gという比較的軽量のボディーに、防塵防滴性、-10℃までの耐寒性を詰め込んでいることです。センサーサイズはAPS-Cであり、軽量性と暗所性能のバランスが良いです。富士フイルム製のカメラは発色の良さにも定評があり、色が好きで使っている方も多いです。
キットレンズとなっているXF18-55mmF2.8-4 R LM OISの重量は310gと比較的軽量ですが、防塵防滴性はありません。よって、雨が降ってきた場合には濡らさないように注意する必要があります。この点についてはカメラ全体を覆うケースを使うなどの運用面でカバーすることが可能です。
焦点距離としては広角27mm~中望遠の84mmをカバーしており、風景写真の他にもポートレートにも最適です。
・重量(レンズ)…310g
・防塵防滴性(本体)…有
・防塵防滴性(レンズ)…無
・耐寒性… -10℃
・焦点距離(35mm判換算)…27-84mm(広角~中望遠)
・センサーサイズ…APS-C
α7C(ソニー)
3機種目はソニー製のα7C(SEL2860 レンズキット)です。
α7Cの特徴は、上位機種であるα7シリーズの構造を簡素化することによって、フルサイズセンサーを搭載しているにも関わらず509gという軽量を達成していることです。フルサイズセンサーを搭載したミラーレスカメラを最初に発売したのはソニーであり、レンズのラインナップや機種の多さが最も充実しています。防塵防滴性については「配慮した設計」となっており、前述2機種に比べるとやや不安が残ります。動作温度環境の下限は0℃までですが、冬山に登るような場合でなければ大きな問題とはならないでしょう。さすがに氷点下になった瞬間に電源が落ちるということは無いはずです。(上位機種でも防塵防滴・耐寒性は同等です)
キットレンズとなっているSEL2860の重量は167gとなっており、フルサイズ用レンズとしては異次元の軽さです。焦点距離としては広角28mm~標準の60mmをカバーしており、風景写真の他にもポートレートにも使えます。
・重量(レンズ)…167g
・防塵防滴性(本体)…有(防塵防滴に配慮した設計)
・防塵防滴性(レンズ)…有(防塵防滴に配慮した設計)
・耐寒性…0℃
・焦点距離(35mm判換算)…28-60mm(広角~標準)
・センサーサイズ…フルサイズ
Z5(ニコン)
4機種目はニコン製のZ5(Z 24-50mm f/4-6.3 レンズキット)です。
Z5の特徴は、一眼レフカメラの老舗であるニコンが、操作性をそのままに、軽さや画質を向上させていることです。重量は675gとなっており前述のカメラと比べるとやや重たくなっていますが、これは操作性や機能に妥協していない証拠でもあります。防塵防滴性については「配慮した設計」となっておりやや不安が残ります。動作温度環境の下限は0℃までですが、冬山に登るような場合でなければ大きな問題とはならないでしょう。さすがに氷点下になった瞬間に電源が落ちるということは無いはずです。(上位機種のZ6やZ7でも防塵防滴・耐寒性は同等です)
キットレンズとなっているZ 24-50mm f/4-6.3の重量は195gとなっており、フルサイズ用レンズとしては異次元の軽さです。焦点距離としては広角24mm~標準の50mmをカバーしており、風景写真の他にもポートレートにも使えます。
・重量(レンズ)…195g
・防塵防滴性(本体)…有(防塵防滴に配慮した設計)
・防塵防滴性(レンズ)…有(防塵防滴に配慮した設計)
・耐寒性…0℃
・焦点距離(35mm判換算)…24-50mm(広角~標準)
・センサーサイズ…フルサイズ
尚、Z5には「NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR」レンズとセットになった別のキットも存在します。重量が約500gと重くなりますが、望遠200mmまでをカバーしていることが特徴です。動物や遠くの景色を切り取って撮影したい場合に、重さを許容できるのであれば良い選択肢となります。
まとめ
軽量性・安心性・低価格を重視するなら、OM-5がおすすめです。IP規格に沿った優れた防塵・防滴性と、合計668gの軽量がメリットとなります。
発色の良さを重視するならX-T5がおすすめです。
フルサイズセンサーを使いたいならZ5がおすすめです。老舗メーカーならではの操作性の良さと、フルサイズセンサーの余裕のある描写(ノイズ・白飛び黒潰れの少なさ)がメリットとなります。
フルサイズセンサーと軽量を重視するならα7Cがおすすめです。フルサイズセンサーを搭載したカメラとしては合計676gと、異次元の軽さがメリットとなります。
今回の記事は以上になります。