写真を撮る人であれば、写真の腕を磨きたいと思う方は多いでしょう。そのためにはフォトコンに応募するのが一般的ですが、何度も落とされてしまって結局何が悪いのかが分からない、ということも多いのではないかと思います。また、フォトストックに写真を登録してお金を得たいと考える人も多いでしょう。しかし、いくら写真を登録しても1円も稼げない、ということも多いです。
上記に該当する人たちにオススメしたいのが、スウェーデンのフォトストックサイト、1x.comです。
1x.comはスウェーデンに本拠を置く写真投稿・販売サイトです。ユーザーが1x.comに投稿した写真は約2日間をかけて学芸員によって審査され、そのうち5%程度だけがpublished(公開)されます。そして、publishedされた写真は1x.comやその関連サイトを通じて全世界で販売されます。このpublishedされる過程を通して写真の腕を磨くことができ、そしてpublishedされればお金を稼ぐことのできる可能性が出てくるからです。
今回の記事では、1x.comの利用方法を紹介します。
(1x.comでpublishedされた写真の解説記事はこちら!)
この記事では、現時点での1x.comについてお伝えしています。
本記事の閲覧日には、1x.comの仕組みは一部変化している可能性があります。
目次
1x.comをおすすめしたい人
1x.comをオススメしたいのは、主に以下の2つに該当する人です。
写真をお金に変えたい人
1つ目は、写真をお金に変えたい人です。
高い機材をそろえ、交通費を払っていい写真を撮っても、instagramなどのsnsにアップするだけで満足している人は多いのではないでしょうか。たしかにinstaで沢山いいねを貰うことは気持ちのいいことです。しかし、いいね自体はお金にはなりません。一方で、1x.comでPublishedされた写真は全世界に向けて販売されるので、お金を稼ぐことができます。
写真の腕試しをしたい人
2つ目は、写真の腕試しをしたい人です。
写真の腕を試すためには、フォトコンに応募する人が多いでしょう。しかし、フォトコンは審査までに数か月もかかり、しかも数百人の応募人数に対してわずか数人しか表彰されないという狭き門です。1x.comであれば、写真1枚に付き、審査時間は1.5日~2日間程度しかかかりません。また、仮に写真がNot selectedされたとしても、その写真がどれくらい人気だったかが数値でわかり、そして場合によっては批評コメントも付きます。よって、短いスパンで写真の腕を試していくことができます。
尚、2021年9月頃までは、審査に1週間弱を要していました。審査期間の短くなっている現在は、1x.comに大量の写真を提出できるので狙い時かもしれません。
1x.comの写真ジャンル
2021年6月9日現在、1x.comには以下の20個のジャンルがあります。
筆者が挑戦しているのはこのうちのlandscape(風景)になります。クリックするとリンク先に飛んで1x.comのpublishedされている写真を見ることができます。どれもレベルの高い作品ばかりです。
- abstract(抽象写真)
- action(動体)
- animals(動物)
- architecture(建造物)
- conceptual(概念写真)
- creative edit(創造写真)
- documentary(ドキュメンタリー)
- everyday(日常)
- fine art nude(ヌード)
- humour(ユーモア)
- landscape(風景)
- macro(至近距離)
- mood(ムード)
- night(夜景)
- performance(パフォーマンス)
- portrait(肖像)
- still life(静止物)
- street(路上)
- underwater(水中)
- wildlife(野生動物)
1x.comで写真が審査されるまでの流れ
1x.comに写真を提出し、写真が審査完了されるまでの流れを以下に紹介します。
有料登録する
まずは1x.comに有料登録します。
無料会員は、他者の写真を回覧したり審査することはできますが、自身の写真を審査してもらうことはできません。プランには、Yearly(年間)、Quarterly(3か月間)、Monthly(1か月間)の3種類があります。契約期間が長くなるほど1か月あたりの料金は下がる一方で、一度に払う金額は高くなります。まずはMonthlyで様子を見て、自身に合うようであればQuarterlyやYearlyに契約を変更すると良いでしょう。
尚、この契約は自動更新されてしまうため気を付けましょう。契約を継続したくない場合には、解除ボタンを押すことを忘れないようにしましょう。
写真をアップロードする
次に、写真をアップロードします。
どうやら写真サイズの上限は無いようです。少なくとも28MB程度の写真をアップロードすることができました。一方、極端に画質が悪いとアップロード後に審査に送ることができなくなります。しかしこの点については、極端にトリミングした画像でなければ特に心配することはありません。
尚、画像形式については、adobeRGBよりもsRGBの方が好ましいとのことです。adobeRGBでもアップロード自体は可能ですが、正確に色を反映させるにはsRGBの方がよいとのことでした。この点については1x.comのホームページ上に記載がなかったので、メールで確認をしています。
アップロードが完了して写真をクリックすると、Photo title(写真のタイトル)とDescription(説明文)の記載を求められます。後述しますが、これらをちゃんと記載するようにしましょう。
Tags(タグ)の記載を求められます。Tagsを記載することによって、Buyer(買い手)があなたの写真にアクセスする可能性が高くなります。
Categoryを選択します。筆者の場合は「Landscape(風景)」か「Night(夜景)」を選択することが多いです。
写真を販売したい場合には「Yes, sell it」を、販売したくない場合には「No thanks」を選択します。(写真が販売されるのは、この後、写真がPublishedされた後になります)
Show technical detailsをクリックすることで、カメラやレンズの商品名や撮影時の設定を入力することができます。筆者の場合はこれらの項目を入力しないことが多いです。入力の有無とpublishedのされやすさとには関係ないように感じています。
Curateに送る
「Send to Curators」ボタンを押し、写真を審査に送ります。少なくとも2020年前半までは一度に複数の写真を審査に送ることができたのですが、現在は1枚ずつしか写真を審査に送ることができなくなってしまいました。
Curationは、約1.5~2日間かけて行われます。前半はMember curators(一般学芸員)による審査が、後半はExpert curators(専門学芸員)による審査が行われます。
Curation中には、自身の写真が他の写真よりもどれだけpopular(人気がある)かが%で表示されます。この数値は刻一刻と変化していきます。この数値が高いほどpublishedされる可能性が高くなります。
ですが、あくまでも目安です。筆者の場合70%でNot selectedされたこともあれば、51%でpublishedされたこともあります。ちなみに、これまでにpublishedされた3枚の写真の数値は「51, 52%」「71, 71%」「59, 59%」です。
Curation中には、写真のlike(好ましい点)とimprovement(改善点)が円グラフで表示されます。しかし、これは強制選択方式になっているため、あまりあてにはなりません。下のグラフでも、likeとimprovementの両方にOriginality(独自性)が挙げられており、どちらを信用していいかがわかりません。
curation中に、curatorからcomments(コメント)が付くことがあります。しかし、大半のコメントは「美しい色や光だ」と言ったような当たり障りのないコメントでしかないため、やはりこちらもあまりあてにはなりません。一方で「わずかに影がにぶい」といったような、写真向上に繋がるコメントが付くこともあります。しかし、これもmember curatorsの意見でしかないため、やはりどこまで信用するべきかは最終的に自分自身で判断する必要があります。
Published or Not selectedされる
写真をCurationに送ってから1.5~2日後に、PublishedかNot selectedの通知が来ます。
publishedの有無にかかわらず、curation後にはcritique(批評)をリクエストすることで、専門家から批評を貰うことが可能です。PublishedやNot selectedにかからわず、critiqueを使うことで写真のレベルをワンランクアップさせることができるため、おすすめします。
Publishedされるためには
1x.comでpublishedされるためのコツを、以下に記載します。
積極的に、目的を持ってレタッチする
写真をphotoshopで目的を持って、積極的にレタッチすることが重要です。
これは単に「紅葉や新緑の色の彩度をあげよう」とか「かすみを除去して遠景を見えるようにしよう」ということではありません。例えば、見せたい被写体のコントラストは高くして強調し、逆に見せたくない被写体は彩度や明度を下げて見えにくくする、といったレタッチです。lightroomではphotoshopに比べて編集の自由度が格段に低く、このようなレタッチをすることはほとんどできません。筆者の場合、jpeg撮って出しやlightroomでRAW現像した写真をアップしていても、publishedされることは無く、50枚連続でNot selected(棄却)されていました。
ちなみに、日本国内のフォトコンでは「現実と異なる様子に写真をレタッチすることは悪だ」とされることも多いですが、これは考え方の違いです。参考になる話として、小説家の百田尚樹氏も「事実を脚色することで皆が読みたいと思う話に仕上げて、その対価としてお金を得ている」という趣旨のことをおっしゃっています。
風景をメインで撮影していて、尚且つPhotoshopの操作にあまりなじみのない場合には、「風景&ネイチャーAdobe Photoshopレタッチの教科書」がおすすめです。Photoshopの基本的な操作方法と、風景写真のレタッチ方法を紹介している本です。筆者もこの本でphotoshopの使い方を学びました。
タイトルと説明文をちゃんと記載する
写真のタイトルをちゃんと記載し、さらに「なぜその写真がいいのか」を文章で説明することが重要です。
説明するべきなのは「構図」「レタッチの意図」「この写真の珍しさ」などです。もちろん、この文章は英語で書く必要があります。英語に疎い筆者は、いつもGoogle翻訳のお世話になっています。
筆者の場合、これら(phothopでレタッチする、タイトルと説明文を記載する)を実行するようになってからは、約30%の確率で写真がpublishedされるようになり、その枚数は計10枚となりました。
Popularityの高かった写真は再提出する
Popularityの高かった写真については、何かを改善して再提出しましょう。
なぜならば、Popularityの高かった写真には何かが少しだけ欠けていてnot publishedされていることも多く、あと少しでpublishedされることも多いからです。どれくらいならPopularityが高いと言えるかについて明確な指標はありませんが、筆者の感覚では30%以上です。というのも、筆者の写真では0%が付くことも多く、一方でpublishedされる写真は50%以上となることが多いです。よって、その中間をとって30%としています。
何を改善したらいいのか?についても明確な指標はありません。場合によっては改善につながるコメントを参考にすることもありますが、多くは写真編集から時間が経過した後に、自分自身で写真を再度見て気が付くことが多いです。
例えば、以下は「さかさまの燧ケ岳」というタイトルで、その名の通り尾瀬沼に反射した燧ケ岳を撮影した作例です。左はPopularityが31~32 %でnot selectedされたものです。この写真の改善点は「山と池に反射した雪が茶色くなっていること」だと考えて、右の写真のようにこれらを白くするレタッチを施しました。また、「画面右の木々が邪魔な要素で、コントロールできていないように思える」というコメントもあったので、無理やりな感はありますが「この枯木は、季節がまだ冬であることを示している」という説明文を付けたしました。その結果、36%のpopuarityを得てpublishedされることに成功しました。
以下に別の例も示します。
以下は「国立公園のパトロール」というタイトルの作例です。五色ヶ原小屋の上にヘリコプターが通った瞬間を撮影しました。Popularityが0~1%でnot selectedされています。
Popularityが0~1%と低かったので、再提出してもpublishedされるかは微妙なところだったのですが、自分の中では自信作でした。そこで、「タイトルにパトロールとある割には、ヘリコプターの存在感が無いのではないか」と考え、以下のようにトリミングをして再提出したところ、popularityが54~55%でpublishedされることに成功しました。
関連記事・書籍
以下に関連記事や書籍を紹介します。
以下記事では、1x.comでpublishedされるためのコツを紹介しています。
風景をメインで撮影していて、尚且つPhotoshopの操作にあまりなじみのない場合には、「風景&ネイチャーAdobe Photoshopレタッチの教科書」がおすすめです。Photoshopの基本的な操作方法と、風景写真のレタッチ方法を紹介している本です。筆者もこの本でphotoshopの使い方を学びました。
レタッチする際には、キャリブレーション可能なモニタを使用する必要があります。キャリブレーションしていないモニタを使ってレタッチをしても、色を正確に合わせることはできません。
モニタのキャリブレーションには、「SpyderX Pro」がおすすめです。
レタッチした写真は、最終的にプリントして確認することが望ましいです。透過光を利用しているモニタと、反射光を利用している紙とでは原理的に写真の見え方が異なります。そして1x.comのバイヤーの大部分は、写真を紙にプリントアウトして利用します。
今回の記事は以上になります。
コメント
1x.comについて、詳細にわたり解説いただき、大変勉強になりました。私は、長年スタジオにおける商業広告のカメラマンを職業にしておりましたが、定年退職を経てやっと「撮りたい写真」を撮れる環境となりました。ありがとうございました。
稲葉さん
コメントありがとうございます。ブログ執筆の励みになります。
自分にとって、職業カメラマンは雲の上の存在です。
1x.comでpublishedされた暁にはぜひお知らせください。